内容説明
パソコンの画面で世界中の人々と交流できる高度情報社会、その一方で繰り返されるテロと戦争、増えつづける犠牲者。豊かな日本に繰り広げられる華やかな消費社会、その一方で交通事故を上回る自殺者、増加の一途をたどる凶悪犯罪。そうした中で、私たちは社会のシステムの限界を肌で感じています。本書は、そうしたシステムの有り様を、ジェンダー、歴史、人間と自然という視角からとらえなおし、どうしたらシステムの限界を克服できるのかを真剣に問うています。人と人との豊かな交流を保障できるような約束事とは何かを考えさせてくれる人間的情感の流れている読み物です。執筆者は広島大学総合科学部という文系・理系の壁を越えることを目指した空間で、研究と教育に携わる多様な分野の研究者です。狭い専門分野の壁を越え、果敢に総合科学を模索し、それをあらたな社会の飛躍台にしようとする試みが本書です。
目次
第1部 システムの考え方を問う―ジェンダーの視点から(ジェンダーという考え方;ジェンダーを生きる;人間行動におけるジェンダー ほか)
第2部 「近代」・「現代」というシステムの成立―地域の視点から(長期構造変動としての日本の近代化―都市の日常という視点から;中国知識人の問いかけ;システムによる生活世界の変容―ドイツ第三帝国のユダヤ人と「混血」 ほか)
第3部 現代における生活世界の変容・再編(エントロピーの増大と私たちのくらし;IT革命によるテクノロジーの変化;対人行動の社会的起源 ほか)