出版社内容情報
長年貧困問題を取材してきたジャーナリストは、2020年半ばにパンデミックのさなかのアメリカを、西から東へと旅した。突然仕事を失い困窮している人々と彼らを支援する人々の声、そしてアメリカの歴史を追うノンフィクション。
内容説明
アメリカの生活困窮者の取材を行ってきたジャーナリストは、パンデミックとBLMの2020年を生きる人々の声を聞くために旅に出た。壊れゆくアメリカンドリームを、この国が取り戻すことはできるのか。
目次
第1部 生まれたときからドン底
第2部 カリフォルニア
第3部 ネバダ‐アリゾナ
第4部 デンバー
第5部 ミートタウン
第6部 ヤングスタウン
第7部 もしも二〇二〇年代が一九三〇年代だったら
第8部 ニューヨーク・シティ
著者等紹介
マハリッジ,デール[マハリッジ,デール] [Maharidge,Dale]
ジャーナリスト。1956年オハイオ州生まれ。貧困問題の記録報道におけるアメリカの代表的著作家。写真家マイケル・S・ウィリアムソンとの共著『そして彼らの子どもたちは(And Their Children After Them)』(未邦訳)で1990年ピュリツァー賞ノンフィクション部門を受賞
上京恵[カミギョウメグミ]
英米文学翻訳家。2004年より書籍翻訳に携わり、小説、ノンフィクションなど訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
109
Fucked at Birth.生きることの絶望を、これほど端的に表現した言葉はない。経済格差の拡大で追い詰められていた貧困層が、トランプ時代に再燃した人種差別と新型コロナ流行でとどめを刺された格好なのだ。家や仕事を失ってゴミ箱を漁り、支援物資配給に行列をつくる姿が世界最強国家の国民だとは。かつてソ連崩壊直後のモスクワで道ばたに立って物を売っていた姿に冷戦の敗者を見たが、アメリカも勝者とは思えなくなる。プーチンは本書を読んで、病み衰えたアメリカは何もできまいとたかをくくってウクライナ侵攻に踏み切ったのか。2022/03/01
kan
21
カリフォルニアからニューヨークまで、コロナ禍のアメリカを車で横断するロードトリップレポート。各地で出会った人々のナラティブのような形式をとり、様々な側面からアメリカの今が記録されている。失業と住宅立ち退き問題、トランプ時代の抑圧と余波、人種や移民差別、教育や医療の問題、中産階級の転落などテーマは多岐にわたるが、一貫しているのは、オハイオのヤングスタウンのような典型的なラストベルトの街だけではなくアメリカ中で拡大する経済格差による先の見えない絶望と停滞だ。翻訳が直接的で原文を想起させ、少し読みにくかった。2022/04/02
yooou
11
☆☆☆☆★ 失業率や貧困率などの数字からだけでは絶対にわからない貧困に向き合う厳しすぎる現実があった。コロナ禍はその厳しい現実をさらに厳しくするものでもあった。それは確実に日本でも進んでいるはず・・・2022/10/31
mimosa
6
アメリカの生活困窮者の取材を行ってきたジャーナリストの手記で パンデミックと共に失業者が増えて家を持たない人たちが増え、まるでゾンビタウンと化した町々。 砂漠で放置された廃業した後のガソリンスタンドの壁の落書き 「Fucked at Birth (生まれたときからドン底)」 自由の国、あらゆる人々にチャンスが与えられる国、努力すれば成功できる国その輝きをもう一度取り戻してほしいと後書きより。 考え様によっては日本に生まれてきた私たちはツいているし 自分の今の状況からもう一歩踏み出す原動力につながります2022/03/08
shiai
5
デール・マハリッジ「コロナ禍のアメリカを行く」を読んだ。 長年貧困、差別などの社会問題について書き、ピュリッツアー賞も受賞した作家だが、2020年半ば西から東へと旅して、コロナ禍で仕事を、住む場所を失った人々の現実を見つめたルポタージュ。GDP世界1のアメリカは、実は貧困がはびこり、セーフティネットがなく、生き延びることが厳しい国でもある。読むほどにそれが伝わってきて辛くなる。 https://note.com/shiai/n/n6596c42b95402022/01/26