出版社内容情報
無実にもかかわらず「自白」して無期懲役となった元弁護士と事件関係者との「往復書簡」は、「毒入りチョコレート」殺人をめぐる推理合戦となり、やがて「真相」のぶつかり合いが思わぬ方向へ物語を導いていく。書き下ろし長編。
内容説明
殺人犯として服役していた元弁護士が仮釈放後にある関係者に送った書簡。それが事件のすべてを根底から覆す引き金となった。「わたしは犯人ではありません。あなたはそれを知っているはずです」。
著者等紹介
深木章子[ミキアキコ]
1947年東京生まれ。東京大学法学部卒。元弁護士。2011年に島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作『鬼畜の家』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
177
ルビンの壺の図案の様だがこれは男女。もうこのカバーからして私は既に誤魔化されていた。これでもか!ってくらい深木さんにしてやられた感じ。(褒めてます)往復書簡っていうのが出所した男・治重と、愛したはずの女・橙子のそれぞれの思惑を42年を経て浮かび上がらせる。白鳥の歌での独白には参ったとしか言いようもなく・・最後の植村刑事課長の言葉が重く響いた。2020/04/14
ちょろこ
147
細部まで練られたミステリ、の一冊。昭和41年に起きた毒殺殺人事件。無実にもかかわらずその事件の殺人犯として服役していた元弁護士が仮釈放後、事件関係者との往復書簡であの日の事件の真相に迫っていく。まずいきなり横溝ワールドのような親族関係、雰囲気で惹きつけられ、往復書簡での推理合戦は緊張感伴うシーソーゲームを思わせ、さらに惹き込まれる。これは読み応えあるし翻弄させられる。そして場面は一転、予想外の展開へ。人の性格まで熟知して細部まで練りに練られたがっつりミステリに最後は感嘆の吐息だった。2020/06/27
buchipanda3
128
本格ミステリ長編。巧妙に重ねられた仕掛けに唸らされた。毒入りチョコ、多重推理ということであの古典へのオマージュも込められていると思う。読んでいて早い段階である意図に気付くのだが、それだけでは終わらなかった。往復書簡という形態を用いた理由も合点。後から思えば上手い具合に誘導されていた気もする。"欺瞞に満ちた殺意"は最初の事件だけでなく、あちらの方も指すのだと思う。執念がもたらした欺瞞に煩悶する気持ち、それを感じさせる仕掛けも巧かった。2020/02/18
とん大西
118
40年の刑期を終え、仮釈放となった楡治重。そして、待っていた義妹の楡橙子。許されぬ恋でありながら、かつて深い愛情を交わしていた二人。裟場に戻った元殺人犯。資産以外に全てを失った孤独な老女。星霜を経て再び交わりだす二人。治重から橙子へ、橙子から治重へ。彼らの濃密な手紙のやりとりから導きだされる毒殺事件の真相…。治重が炙り出す説に舌をまく橙子。橙子の大胆な推理に賛辞を惜しまない治重。モノローグの如く応酬される推理書簡がたどり着く先は…と、気になって気になって一気読み。う~ん、アノ仕掛けはお見事。凝ってますね。2020/07/24
のりすけ
61
42年前の殺人事件で冤罪を受けた男がシャバに出てきた。真犯人を捜すため、かつて愛した女と手紙のやり取りをして推理合戦をするのだが…。どんでん返しもトリックも目新しさはないけれど、年月を経た男女の想いの相違ったら。人生の終焉の執念。じわじわとクる。面白うございました!2020/10/09