出版社内容情報
多くの民主主義国家で不平等が拡大し、強権政治が台頭し、リベラリズムが機能不全となっている。注目の政治学者が政治、経済、教育、テクノロジーといった様々な分野で見られる問題を検証し、失敗の原因と是正をさぐる。
内容説明
多くの民主主義国家で不平等が拡大し、強権政治が台頭し、リベラリズムが機能不全となっている。注目の政治学者が政治、経済、教育、テクノロジーといった様々な分野で見られる問題を検証し、失敗の原因と是正をさぐる。
目次
序 リベラリズムの終焉
第1章 持続不可能なリベラリズム
第2章 個人主義と国家主義の結合
第3章 アンチカルチャーとしてのリベラリズム
第4章 技術と自由の喪失
第5章 リベラリズムVSリベラルアーツ
第6章 新たな貴族制
第7章 市民性の没落
結論 リベラリズム後の自由
著者等紹介
デニーン,パトリック・J.[デニーン,パトリックJ.] [Deneen,Patrick J.]
米国ノートルダム大学政治科学部教授。過去にプリンストン大学やジョージタウン大学でも教鞭を取る
角敦子[スミアツコ]
福島県会津若松市に生まれる。津田塾大学英文科卒。軍事、歴史、政治など、ノンフィクションの多様なジャンルの翻訳に携わっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よしたけ
15
リベラリズムが一度は成功したからこそ、失敗したと説く。本来リベラリズムは個人を伝統的な社会の組織の束縛から解放し、解放された個人は理性によって自由に物事を判断すべき筈が、国家・市場というより大きな機構に寄り掛かったに過ぎず、即ち脆弱・依存的になったという。背景にリベラルアーツの衰退を挙げる。本来、同学問を通じて自由を獲得する為の見識を付ける筈が、目先の実利を優先した学問を学び、その力を失った。目指すべきは「ポリスの生活」。人々が共に地域の問題を解決し、自制と自立の習慣を身に付ける、古き良き日への回帰だ。2020/07/28
人生ゴルディアス
9
とても良かった。現在のリベラルに対して感じる気持ち悪さみたいなものがすべて書かれていた。伝統や文化というものは人間関係に根差していて、文化とか歴史を個人を抑圧するものとして解体してきたリベラリズムは基本的に孤独を招き、個人の権利保障としての法を求め、対立する個人の自由の仲裁役として国家がますます私生活に口を出す道を作る。リベラリズムは個人の願望充足を善とするが、社会的に皆が希望をかなえられる社会というのは急速に発展している状況のみであり、現在はその約束を守れていない。2020/01/25
ぽん教授(非実在系)
8
自由主義の欠陥を真正面から指摘するえげつない本。共同体・責任・慣習のない原子化した個人を社会契約で束ねて国家にするというホッブズ・ロック・ルソーの言い分の通り、自由主義と国家主義はこうして両立してしまう。国家主義の代わりに市場主義(新自由主義)になったところで同様であると主張する本書は、先進国の左右の立場何れにもどぎつい現実を突き付けてくる。ようやく近代主義の曲がり角に来たのだと思わせてくれる。2021/04/09
積読0415
7
「リベラロクラシー」という言葉との出会いが本書の収穫。新たな貴族階級ということらしい。リベラル+貴族。水と油ではないか?と思ったが、そんな層が確かに存在すると気づく。アメリカでは東西両海岸、日本では都市圏の大学、マスコミ界隈だろうか。一般庶民を差別はしないが、若干下に見るスタンスの人々だ。かつて一部新聞が自身の目的を「国民の啓蒙」と謳っていたことが思い出される。そういう自分も、何かにつけて小難しい本を読んでは、周りに多少の優越感を感じつつ、偉そうに語っている様な気がする。なかなか鋭く突き刺さる本だ。2019/12/08
miunac
6
社会や地域共同体が必要であることは多くの論者が語っている(例えば、マイケル・サンデル)。フランシス・フクヤマの勝利宣言(1989)から現在までに起こったことは、インターネットの普及とグローバリゼーションの加速であろう。ネットは米軍の技術を転用したものであり、グローバリゼーションを主導したのは合衆国である。ここを故意に隠蔽した上で議論しても、結局は、昔は良かった的な発想しか出ないのである。要はセカイ系(グローバリゼーション)はダメだという話であって、著者は近代以前に過度の期待をしている。2020/01/26