出版社内容情報
19世紀、ヴィクトリア時代の社会派ジャーナリストの雄メイヒューが、密着取材。呼売商人、故買屋、煙突掃除夫……。繁栄のさなかに巣食う貧困のどん底に生きる人々があみだす珍商売・奇商売の数々。当時の庶民の生活と風景が甦る。
内容説明
一九世紀ロンドン、ヴィクトリア時代―階級社会の最下層で暮らす労働者たちの貧困、生きることへのどん欲さ、諍(いさか)い、笑い…庶民のリアルな姿と肉声をつぶさに観察、克明に描いた英国生活誌の不朽の名著。
目次
路上の人びと一般、特に呼売商人の種類
街頭職人
土曜日の夜のロンドンの街頭市場
呼売商人の習癖と娯楽
「ヴィクの天井棧敷」
無教育な呼売商人
「呼売青年」の教育
呼売商人の服装
一ペニー劇場
魚を売る街頭商人…ビリングズゲイト〔ほか〕
著者等紹介
メイヒュー,ヘンリー[メイヒュー,ヘンリー][Mayhew,Henry]
1812年英国生まれの著述家。1887年、気管支炎のためロンドンで死去
植松靖夫[ウエマツヤスオ]
上智大学大学院文学研究科英米文学専攻博士後期課程修了。東北学院大学文学部教授。東北大、弘前大、名古屋外国語大学大学院などでも教鞭を執る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Miyoshi Hirotaka
25
ありふれたことは記憶に残らず、記録もされない。一方、文学作品はそれらを前提に創作される。例えば、天井桟敷に陣取る人がどういう人達かわからないと往年の名画は理解が深まらない。また、「メリー・ポピンズ」で煙突掃除人が楽しそうに踊るのを見て勘違いするとアニメ「ロミオの青い空」(黒い兄弟)を誤読する。後年の読者のために作品中に詳細な記述を残してくれるユゴーのような作家もいるが、それは稀。19世紀半ばには産業革命の影響が都市生活の隅々に行き渡り、新たな最悪の仕事とそれを担う最下層を生み、超格差社会が形成された。2024/09/05
tosca
18
著者のヘンリー・メイヒューはヴィクトリア時代の著述家で、新聞や雑誌へ記事を書いており、本書も実際に現地へ赴き人々にインタビューして書かれた物なので、当時のロンドンの市場の喧騒、魚の臭い、汚れた服、安宿の不潔さ等、臨場感に溢れ、街角の花売や屋台の食べ物売りや様々な方法でなんとか生計を立てている貧しい人々の暮しが細かく綴られている。救いようのない貧困層のまさに路地裏の暮しは、本や映像から想像するよりも厳しい実際の世界で、大英帝国の優雅な貴族社会とはかけ離れた最下層の人々。下巻へ2020/09/26
氷菓子
4
著者が19世紀ロンドンの最下層の人々にインタビューしたものがまとめられている。市場であろうと寝ぐらとなる安宿であろうと、ごちゃごちゃに人が詰まっていて衛生環境が悪かったことが容易に想像できる。盗んだものを売って生きていくのは、一応は罪になるのだろうけど日常的に行われている感じ。もしここで生活しなければならなかったとしたら生き抜ける自信がない。2022/02/07
こま
4
19世紀の知識階級人が同時代のガチ底辺の人を取材しまとめた本。この巻では街頭で無店舗販売してる人々に焦点を当てている。人の生活を覗き見する感じ+違う文化+違う時代と色々な面でとても面白い。貨幣価値がいまいち分からないのが残念。当時の人口の何割を占めてるとかあれば良かったのにな。2016/05/06
颯奏
4
十九世紀ロンドンの下町に住む人々の暮らしの取材による生活誌。当時のロンドン下層民の生活を知りたい人にはとてもよい資料になるのではないでしょうか。文章も読みやすいです。挿絵がちょこちょこ入るのでイメージもしやすかった。シャーロック・ホームズがベーカー街で活躍をはじめるちょっと前くらいのロンドン記事になるのかな?2015/07/05