内容説明
中原に君臨する華王朝の都は、紫京と呼ばれている―。その宮城で皇帝の側近が殺された。「歴史から消された出来事」をまとめたある「禁書」が原因らしい。そこには、とうてい人の業とも思われない不可思議な出来事がつづられていた。生死を司る神の水、城壁をすり抜ける軍隊、消失した都市、誰もいなくなった島―。これらを読み解くことで側近殺人事件の真相が見抜けるというのだが…。俊英が挑む、創元推理短編賞受賞作を含む「奇蹟」の連作ミステリー。
著者等紹介
獅子宮敏彦[シシグウトシヒコ]
奈良県生まれ。龍谷大卒。2003年に「神国崩壊」で第10回創元推理短編賞を受賞。こだわり抜いた世界観が注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はの
11
ぶっとびの城攻めトリックがでてくると知り、バカミスとして購入。該当の「マテンドーラの戦い」は、確かに凄かった!本格トリックともいえるので、これを読むだけでも買ったかいはあった。そして、外枠の話が、これほど頭がいたくなるような文章は珍しく、新鮮だった笑。 わざと書いているんだろうなとは思ったけれど、作中作のトリックも、文体も印象に残り、読めて得して笑えた一冊。2015/09/17
むつぞー
8
舞台は中華風の架空の国。前の失われた歴史が描かれた禁書。この架空歴史としても面白そうな所へ、ミステリの要素が入るのです。 しかもこれはまさに架空歴史でなければというものがあります。残りはおまけ的なのが残念です。 探偵府とか人物とかの設定は面白いものがあるんで、ちょっともったいないくらいなんだけど、でも中に描かれた壮大な物語には負けるのよ…。2009/06/17
みっつ
7
馬鹿トリック連発の作中作をクロスオーバーさせる意味で探偵府の面々は必要なんだろうけど、取って付けた感があり過ぎ。作中作は、どれも好きだけど「帝国擾乱」がベスト。中国史好きは、元ネタを考えながら読むと更に楽しめるかと。ネーミングセンスは中二っぽいの多いけど(笑)2010/01/26
紫
6
現実にはありえないトリックに現実味を持たせるにはどうしたらいいか? そうだ、架空の古代中国っぽい世界を構築してしまおう! といった感じの豪快な一冊。メインの短編四つが傑作揃いで、濃密で重厚で格調高く、それでいてエログロ何でもありの、通俗伝奇小説風味に歴史物語をダイナミックに描いてみせた手腕に脱帽。神話や伝説はこうして作られたのかという舞台裏のようであります。一方、外枠の探偵府のお話が雑といおうか、ムリヤリといおうか、温度差が凄いことに。後づけで大きな繋がりを作らないといけない作家もたいへんだ。星5つ。2017/07/08
たこやき
6
物語の外枠と言える利春たちのパートは、正直、微妙。ただ、作中作として描かれる4つの事件は、なかなか面白い。不可思議な事件と、トリックだけみれば、バカミス、トンデモミステリのように思われるものが、科学的な考えなどが弱い、そして、乱世という時代性がしっかりと描かれることで意外な説得力を獲得している。中国史とか好きだった、ということもあり、「この国のモデルは……」とか、そういうのを思いながら読んだ。2009/12/15