内容説明
奥多摩に代々続く秘守家の「婚舎の集い」。二十三歳になった当主の長男・長寿郎が、三人の花嫁候補のなかからひとりを選ぶ儀式である。その儀式の最中、候補のひとりが首無し死体で発見された。犯人は現場から消えた長寿郎なのか?しかし逃げた形跡はどこにも見つからない。一族の跡目争いもからんで混乱が続くなか、そこへ第二、第三の犠牲者が、いずれも首無し死体で見つかる。古く伝わる淡首様の祟りなのか、それとも十年前に井戸に打ち棄てられて死んでいた長寿郎の双子の妹の怨念なのか―。
著者等紹介
三津田信三[ミツダシンゾウ]
2001年に『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーでありながらミステリ的な仕掛けにもこだわりをみせた独特のストーリーテリングで注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yukision
74
刀城言耶シリーズ3作目にして,過去の2作を凌ぐ面白さだった。このシリーズらしく民俗学的呪いや名士一族が仕切る閉鎖的な村独特の雰囲気の中,首のない死体が続々と発見される。やや複雑ながらどんでん返しに次ぐどんでん返しでグイグイ引き込まれた。2021/12/09
えみ
66
いい加減このどんでん返しに次ぐどんでん返しに慣れてもいいはずなのに…いつものように、いや、今回に限ってはいつも以上に驚きを隠せない結末。今回は首無しの胴体がゴロゴロ出てくる、そして首のないまま歩行さえしてしまう、というホラー色強めのミステリ。刀城言耶シリーズ第3弾。男尊女卑が激しい秘守家一族の跡目争いに妖しき祟りが忍び寄る。淡首様の怒りに触れるな。一つ過ぎれば二つ目の悲劇が、二つ過ぎれば三つ目の恐怖が。逃れられない怨念は首を落として持ち去っていく。人かそれ以外か、の境界線がぼやけて何かが入って来る!怖い。2022/10/10
藤月はな(灯れ松明の火)
60
読友さん達の感想からの触発され、風呂上がり後の涼を取るために再読。バークリーの『毒入りチョコレート事件』のように乱発される推理とそれによって生じる齟齬の埋め合わせとしての真相への探求とラストになってから認識できる本当の怪異が持ち味の刀城言哉シリーズ。縁起ともなった祟り神を祀る旧家で起こる首無死体の乱立の意味とは?まず、媛之森妙元なる者の書き出しが『孤島の鬼』の箕浦金之助の手記を意識している所が興味深い。また、怪異は認識した途端に本物になる。読了した人に質問を。あなたはさっき、逢った人の顔を思い出せますか?2013/10/02
がらくたどん
58
胴体と首(頭)は当然セットだと思っているそこのあなた!(私だ)首無しの胴体がぞろぞろ出て来て誰が誰やら。怖いも怖いがそれ以上の大混乱。首無しお化けの淡首様の伝説が色濃い村で戦中・戦後の長いスパンで起きる旧家相続の血の争いが推理小説好きの村の駐在さんの奥さんの手記と記録の体裁で綿々と語られ、挙句に「迷宮入り」かと思いきや。これが真相?と思った矢先、ラスト何章かで次々と読者に渡される覗き眼鏡。架け替えるたびに、元の絵はぐにゃりと歪み同じ手記が記録が違った絵に見えてくる快感。最後の1頁まで神経の行き届いた良作。2022/05/13
紅はこべ
54
読了後、冒頭に戻ってみると、こんなところから仕掛けていたのかと納得。長寿郎って真珠郎に因んだ名前?「首のない屍体の分類」は、カーの密室講義を連想させる。結末のつけ方はミステリよりホラー寄り。2008/09/08