内容説明
いやみな嫌われ者の富豪が列車の中で、かぎ煙草に仕込まれていた毒で殺された。誰がどのタイミングで疑われずに毒を仕込めたのか、数々の証言によって「被告」の前で明らかにされてゆく。はたして「被告」は真犯人なのか。ところが「被告」の名前は最後まで明かされない。関係者の中のひとりであるには違いないのだが…。『伯母殺人事件』をもしのぐ、奇才ならではの技巧に満ちた傑作登場。
著者等紹介
ハル,リチャード[ハル,リチャード][Hull,Richard]
1896~1973年、イギリス。その叙述技巧とブラック・ユーモアあふれる語り口で英国黄金期から戦後にかけて活躍、特異な位置を占める
森英俊[モリヒデトシ]
1958年東京都生まれ。早稲田大学政経学部卒業。翻訳家、評論家。ミステリ洋書専門店Muder by the mailを運営。『世界ミステリ作家事典 本格派篇』で第52回日本推理作家協会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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歩月るな
10
最初から法廷なので被告は当然そこにいるのだが……、叙述がうますぎる。映像向けのカットバックの手法をこれほど滑らかに用いる作家がこの当時にどれだけいたのか解らないが映像的で、漫画が合いそうだ。基本的な時間軸は法廷での一部始終だが、長口舌の陳述が三人称で呈示される。それなのに被告が明かされないお陰で完全に小説だから出来る表現と化す。全編手記の『叔母殺人事件』と好対照を成していており『他言は無用』が極めて良く出来ていた事も改めて実感。三作のみで十年間、邦訳無し。なんか悔しい。『十二人の怒れる男』は鮮やか過ぎる。2016/06/17
植岡藍
4
法廷ミステリなのに被告の名前が明かされない。その、被告は誰なのか?被告が犯人なのか?というような仕掛けは面白いし、ラストもうまい。正義とは何か、という問いかけもほのめかされるものの……ちょっと退屈に思えてしまった。2014/09/21
schizophonic
3
法廷ものでもあって、犯人探しにも真正面から取り組んでいるけれど、それでいてただのそれでもない。王道を行くようで、なんだかちょっとづつズレている、ひねくれぐあいがおもしろい。こういう話かなと思って読むと足元すくわれる。2011/04/15
shiaruvy
2
【2006.08.01 初版】 痺れるほど上手い!名作。2017/08/07
脂肪分
2
どこにピンと来ればいいのか分からないレベルでピンと来なかった。2006/09/18