内容説明
死刑の起源を人間存在の深層からとらえ、イエスの架刑、ジャンヌ・ダルクの火刑、メアリー・スチュアートの斬首刑など、古代からの処刑および刑種の変遷を豊富な図版とエピソードを交えながら描き、死刑の存在を糾問する名著の全訳・決定版。
目次
第1章 死刑の誕生(その温床;血の復讐;人身御供;死刑に値しい最古の罪)
第2章 古代の刑種(追放、石打ち、断崖からの突き落とし;十字架と架刑;絞首刑;斬首刑;車刑、四つ裂き、切り刻み;溺殺と生き埋め;火刑;魔女妄想)
第3章 近代的な処刑方法(ギロチン;近代的な絞首台;電気椅子、ガス室、銃殺)
第4章 死刑の周辺(執行吏について;死刑をめぐる賛否両論)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gtn
6
時として、対象者の存在及び思想を滅却するために利用された死刑。しかし、それは往々にして逆効果をもたらす。一例が宗教改革者ヤン・フス。教会糾弾を刑場まで捨てなかったがために火刑に処される。その結果、彼の宗教哲学の永続が確定される。本物の哲学は消えない。体制はもっと怯えるべきである。2019/03/10
ルナティック
4
死刑の起源が良かった。精神的なことから紐解こうとするのが斬新。復讐や被害者遺族の感情を宥めるため、との通説からちょっと離れている。原始の時代から人間が持っていた、事故や死、そして自然災害等予期できないことへの恐れを、なんとか食い止めよう=宥めようという供物的な意味合いから考え、人間が持つ負の感情を開放し、ストレスから逃れようとする気持ちから、加害者を裁く、という風に。とても面白い。公開承継見物の民衆の大騒ぎも、気持ちの開放の表れだとか。フ~ン、今までそういう風に考えたことがなかったので、新知識を得た満足感2015/10/30
抹茶ケーキ
0
旧約聖書などに見られる死刑の起源から記述を始め、現代の死刑までいたる。精神分析学的な傾向が強いようで、死刑を維持させる根本的な衝動を抑圧(あるいはその現われとしてのスケープゴーティング)に求める。つまり死刑を求める衝動とは、「実は集団的な罪責感と、社会全体の不安の爆発」(250頁)に他ならないとのこと。これは古代以来かわらない衝動であり、そのようなものによって現代の制度が縛られるのは間違っているので、死刑制度は廃止すべき、みたいに話をつなげていく。飛躍はあると思うけど面白いと思った。2016/11/14