出版社内容情報
1990 年代以降、日本の主要産業においてかつて世界市場を席巻したリーディングカンパニーの多くが、急速にその競争力を喪失した。特に、日本のPC産業において一時代を築いたNECのPC-98シリーズの急速な衰退は、この競争力低下の先駆けであり、象徴的な事例の一つである。
同事例は、規格間競争やプラットフォーム転換、モジュラー化などの観点から、これまでも数多くの研究で取り上げられてきたが、その変遷の複雑性と既存企業の没落の非線形性が際立っており、技術面での変化だけに原因を求める議論では捉えきれていない。
そこで本書では、このNECの競争力低下について、「技術そのものの変化」軸でのモジュラー化および支配的プラットフォームの登場・転換と、「顧客/市場との関係性の変化」軸での分断的イノベーションという2軸の変化が同時かつ複合的に生じる《分断的モジュラー化》および《破壊的イノベーション》という概念枠組みに沿って分析することで、その根源的な原因を追究する。
また本書のもう一つの特徴は、《戦史としての経営史》という点にある。戦いのプロセスそのものを分析対象に、企業間の応酬や具体的な打ち手の連鎖から何が見えてくるか、企業間の競争という相互のダイナミクスを、具体的な攻防のプロセスとして丹念に追い、分析する。
日本企業の競争力低下は、PCに限らず、液晶テレビやDVD、携帯電話 / スマホ等でも見られてきた。本書の分析・検討から導かれる競争力低下の本質や、今後の再生に向けた理論的かつ実践的な処方箋は、同様な環境下で日本企業が同じ轍を踏まず、進むべき道を見出す助けとなるだろう。
【目次】
序 章 本書の問題意識と研究課題
第1章 本書のフレームワーク
第2章 日本のPC業界の概要と推移
第3章 日本の初期PC市場における競争I:1976年8月~1994年9月
第4章 日本の初期PC市場における競争II:1994年10月~1997年12月
第5章 価値マップ分析による企業間競争の可視化
第6章 分断的モジュラー化の発生の検証
終 章 考察とディスカッション
補 論 分断的イノベーション研究の文献レビュー



