出版社内容情報
人新世が問う、国際社会の環境と政治
本書は、地球環境問題をめぐる地政学的課題を国際関係論の視点から考察した入門書である。気候変動や資源紛争など現代の問題に対し、国家のみならず企業、NGOなど多様なアクターを視野に入れ、環境地政学の理論的枠組みを提示する。また、近年注目される「人新世」の議論を踏まえ、従来の国家中心的アプローチを超える理論の再構成を試みる。
まず、環境地政学の基本概念、地球工学の政策技術、国際環境交渉の歴史的展開を整理し、次に、国際関係論における権力、安全保障の概念を、エコロジーの視座から再定義する。さらに、資本新世・プランテーション新世・男性新世といった批判的視座を通じて、人新世をめぐる理論の幅を広げる試みがなされる。
多様な視点から国際環境ガバナンスを捉え直し、分野を超えた議論への手引きとなる一冊。
【目次】
【目次】
序章
第一章 資源と紛争――環境地政学の起源と神話
Ⅰ マルサス的パラダイム――緊張の客観的要因としての環境
Ⅱ 地政学的・戦略地政学的パラダイム――資源戦争
Ⅲ 構成主義的・批判的アプローチへ
第二章 人新世の技術――地球工学
Ⅰ 起源――気候改変技術
Ⅱ 地球工学技術――太陽放射フラックスの管理
Ⅲ 地球工学技術――炭素回収技術
第三章 多国間主義と環境
Ⅰ ストックホルムからリオへ――国連によるガバナンスの組織化
Ⅱ 交渉の複雑化
Ⅲ バランスシートおよび困難な評価
第四章 エコロジーの視座から権力を定義する
Ⅰ 国際関係論における権力の二つの定義
Ⅱ エコロジー権力の物質的次元
Ⅲ エコロジー権力の社会的次元
第五章 人新世のエコロジー安全保障
Ⅰ 人間の安全保障から気候安全保障へ
Ⅱ 環境と気候の「安全保障化」
Ⅲ 安全保障をエコロジーの視座から定義する
第六章 「人新世の条件」を政治化する
Ⅰ 資源採掘主義と資本新世――社会的条件
Ⅱ プランテーション新世――植民地的条件
Ⅲ 男性新世と家父長制――ジェンダー化された条件
終章
訳者あとがき
参考文献
-
- 和書
- 山に向かいて