出版社内容情報
「最初に恐怖、その後忘却……」
本書は、14世紀に中央アジアに始まり、ヨーロッパ全域を襲って17世紀まで繰り返された第2のパンデミックを中心に、ペストの歴史から最新の研究までを概説する。
集団墓地を主な研究対象とする著者の一人は、考古・人類学的な分析アプローチから、埋葬された「遺体の年齢、性別、衛生状況に加え、埋葬場所の地理的な配置や葬具の有無、壕内での配置を観察し、ある共同体におけるペストの流行の時間的な経過をより具体的に把握」(「訳者あとがき」)する。記録史料が示すもの(ときに記録自体が難しくなるという状況)についても興味深い。
もう一方の著者は集団遺伝学が専門である。この30年で大きく発展したゲノム研究とそれに関連した解析技術により、発掘された「生物学的史料」からペスト菌の特定が可能になった。また細菌の進化の過程についても見直しがなされているなど、研究の現状についても触れる。
内容説明
埋葬されたペスト患者の遺体の考古・人類学的観察と、それから採取される試料の分子生物学的なゲノム分析によって得られたデータに基づく、過去のペストの流行に関する新たな知見を紹介。ペストの流行の歴史から現状までの全体像を把握することができる格好の一冊。
目次
第1章 ペスト菌とは、なにものか?
第2章 古代の歴史?
第3章 神の怒りと医者たち
第4章 流行の帰結
第5章 目の前の死
第6章 災厄のDNA
結論
著者等紹介
コステドア,キャロリーヌ[コステドア,キャロリーヌ] [Costedoat,Caroline]
エクス=マルセイユ大学准教授、集団遺伝学を専門とする。同大学ADES(Anthropologie bio‐culturelle,droit,´ethique et sant´e「生物・文化人類学、法学、倫理学と保健衛生研究所」)所属。環境がゲノムに与える影響を研究対象とし、研究指導資格を取得
シニョリ,ミシェル[シニョリ,ミシェル] [Signoli,Michel]
考古人類学者、フランス国立科学研究センター主任研究員。エクス=マルセイユ大学ADESのメンバーであり、本書の初版が出版された時点ではその代表を務める。伝染病や戦争などを原因として多くの人の遺体が一か所に埋葬される「集団墓地」を主な研究対象とする
井上雅俊[イノウエマサトシ]
フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)、博士課程在籍。アレクサンドル・コイレセンター及び社会運動研究センター所属。専門は科学技術史と核/原子力史で、現在はフランスの核開発の歴史を「核爆弾の表象とその負の帰結の認識の変遷」という観点から再考する研究に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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晶
とりもり
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