出版社内容情報
現代の「コミュニケーション・ネットワーク論」の先駆者
2006年の企画展示「サン=シモン主義者の時代」(フランス国立図書館)、『サン=シモン全集』(フランス大学出版局、2012)の刊行など、21世紀に入り、再びサン=シモンに関心が集まっている。そこで主導的な役割を果たし、多くのサン=シモン(派)の研究書を手がけたのが、本書の著者ピエール・ミュッソである。「今日の人々はおしなべてサン=シモンの仕事すら知らないという点で一致している。彼の著作は、特に十九世紀のサン=シモン主義運動を通じて大きな影響を与え、現代のもろもろの巨大なイデオロギーの源泉に立つというのに[…]」(「序文」より)。
本書は、膨大な草稿を残し「矛盾の権化」と称されるサン=シモン思想に統一的解釈を与え、師の思想から、第三共和政期の弟子の現実的な政策が誕生する瞬間と理路を描き切る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
10
初期社会主義者というイメージしかないサンシモンだったが、彼とその弟子たちの活動を、現代の新自由主義の源泉であるかのように読み直す。キーワードは「ネットワーク」「循環」「流通」「組織」。エンジニアを含めた「天才」とその他の「人類」からなる新たな社会システム、それを可能にするのが政府による阻害なき自由な貨幣の流通。弟子であるオーギュスト・コントは師の科学的部分のみを扱うが、サン=シモンは晩年宗教へ。垂直的ではなく、水平的(未来にある地上の楽園)な世俗宗教、それを作るのはエンジニアによる世界的ネットワーク構築。2020/05/29
Mealla0v0
5
仏第2帝政期に隆盛を極めるサン=シモン主義。本書は、サン=シモンを実践者とした上で、その実践と思想及びその弟子たちの活動を把握する。社会体にコミュニケーション(交通・通信)のネットワーク(組織網)を張り巡らせ流通を促す。流通すべきものとして、貨幣と知識がある。そして、それを産業主義的テクノクラートが保障する。国家の支配から企業の管理へというヴィジョンはこうして導かれる。サン=シモン主義はのちに左派(革命)と修正主義(行政)に分離し後者が覇権を取る。こうして鉄道や銀行といった流通に関する産業を振興していく。2021/09/10
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