出版社内容情報
最新の研究成果を踏まえた一冊
1世紀から7世紀に定住したゲルマン人諸部族は、ローマ帝国と政治や文化の交流を重ねながら、独自の歴史を刻んだ。彼らは、今日のヨーロッパ世界を担う人びとの祖先といえるだろうか。本書は、19世紀以来の学問発展を踏まえ、研究の最新成果に立ち、古代末期から初期中世のゲルマン人諸部族の動勢に的確な展望を与える。
ギリシア・ローマ世界との接触、文明世界がみた「蛮族の国(バルバリクム)」に関する記述とその記述のあり方、後期ローマ帝国の諸部族の平和的定住、西ローマ帝国消滅後の自立的な部族国家の建設など、中世ヨーロッパ社会の根底における社会変容の諸相を紹介する。
現代ヨーロッパの基礎をかたちづくったとされる中世世界の基礎文化論にも論及し、最新の研究成果を盛り込む。流動化する現代ヨーロッパの理解にも大きな示唆を与えるだろう。
内容説明
最新の研究成果を盛り込み、古代末期から中世初期の動勢に展望を与える。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユビヲクワエルナマケモノ
7
移動前については今でもほとんど「分からない」のが実情のようで、かなり慎重な叙述。一方、いわゆる「大移動」が始まる以前から単なる傭兵ではなく、軍ないし国家の指導中枢に「蛮族」が入って重きをなしていたという点は同時代の中国における「蛮族」の侵入(五胡十六国)と異なる点と言えるかもしれない。ビザンツ帝国が中華王朝式の「夷を以て夷を制す」外交をしていた点は類似しているが。また従来教科書で指摘される「蛮族のカトリックへの改宗」が支配層レベルに止まっていたという点はその後の中世キリスト教界を見る上で重要な点であろう。2021/12/20
バルジ
5
文明と野蛮の間で相互作用によりローマ化したゲルマン部族(蛮族)を簡潔に語る。あとがきに書かれているように本書はフランスで一定の知識を持った読者層を相手位にしているため難解な箇所も少なくない。しかしローマ帝国と帝国を取り巻く「蛮族」の関係は決して一方的ではない相互作用であったことがよく分かる。蛮族達は自身をローマ帝国の普遍的なヒエラルキーの中で位置づけられる事を望み、またローマ人たらんとした。一方のローマ帝国はローマ人だけでは補えない兵力に対し積極的に蛮族を徴募、こうした結果普遍的な「ローマ」世界展開する。2020/11/08
Joao do Couto
4
ゲルマン系部族の歴史は意外と本が少ない。ローマ帝国末期に組み込まれているからなのだろうか。同書はゲルマン系部族の移動と国家形成を丹念に追っている。スペインを支配した西ゴート王国については記述は少ないのは残念だが、考古学的調査から文化面に触れていたり、統治についてもある程度の見通しを付けていたりして、非常にわかりやすかった。とにかく、いくつかの章ではこれまでの歴史を考え直させるように語られており、この種の本としては出来が良いと思う。2019/07/04
汲平
3
西ローマ帝国崩壊からカロリング朝成立までの歴史がよく判らず勉強のため読みました。判りやすくて面白かったのですが、「理解」までにはもう少し読み込みが必要です。2020/02/22
Teo
3
教科書の記述でゲルマン民族の大移動をイメージすると375年に一斉に蛮族がローマ帝国内に侵入して来た感じだが、当たり前と言えば当たり前ながらそれはじわじわと進行して行く。そこまではそうなんだろうなと思った。それにしても375年の暗記方法が「みなゴー」なので一斉移動の印象に拍車をかける。2019/10/07