出版社内容情報
ゾラとモーパッサン、ゾラに反発した「五人の宣言」、「ナチュリスム」を唱えた作家など一時代を画した文学運動の軌跡。
内容説明
19世紀後半のフランス文学に大きな流行をもたらした自然主義とは何だったのか。本書はこの運動を歴史的・社会的観点から広く検討し、起源から現代への影響までを視野に収める。ゾラ、モーパッサン、ユイスマンスだけでは見えない時代の精神が明らかにされる。巻末に作家略伝を収録。
目次
第1章 指標となる年代
第2章 自然主義の理論
第3章 個人とグループ
第4章 フィクションの技法
第5章 自然主義の受容
結論
著者等紹介
足立和彦[アダチカズヒコ]
1976年生まれ。大阪大学大学院博士後期課程単位修得退学。パリ第四大学博士課程修了。現在、大谷大学任期制助教。専攻はフランス自然主義、特にギ・ド・モーパッサン(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ラウリスタ~
5
タイトルの通り、フランスの自然主義文学運動についてざっくりと書かれてある。一つのことについて長く書くのではなく、「はい次!」って感じにどんどん進む。どんな作家、作品があって、それらの関係は?とか気になったときに振り返りやすい構成だと思う。文学史の教科書から自然主義の項目だけをとり出して、大幅に加筆した感じかな。今では忘れられた作家も少なくはないし、自然主義なんてものをどう定義するかは難しい問題だと思うが、そこを過不足なくまとめた印象。2013/05/28
きつね
5
膨大な作品・作家の紹介を大づかみだが説得力のある切り口で配置してくれて助かる。といっても、邦訳されてない作家が多くてつらいが…。個人的には第四章「フィクションの技法」1.科学的小説 2.主人公の終焉 3.非人称的エクリチュール のとこが面白かった。あとモーパッサンが語った作家サークルの牧歌的風景がフィクションだった(pp73-75)という話は作家像形成の問題として面白い。2013/05/20
Reina SAIJO
1
「文学での自然主義とリアリズムの違いが今ひとつよく分からない」「自然主義は自然科学を模範にしてたらしい。どういうことなのか気になる。」という漠然とした疑問を持って本書にあたったのだが、入門書として親切で楽しく読めた。物足りない個々の論点を深めたくなる。自然主義の自然主義たる所以はいくつかあるようで、「観察と実験を通じて社会的現実のあり方を明らかにする」「生物種の分類のように、人間を社会的環境に即して分類する」「事実を写し取るのであって、理念や規範を作品に投影するのではない」というような特徴があるようだ。2017/01/13
トクナガ
0
フランス自然主義文学とは何なのか?ということが知りたくてこの本を手に取った。その疑問は解決し、自然主義文学とは調書的な内容を持った作品群であるという感じを受けた。 ただ新たな疑問として、一般的にフランスの自然主義文学が日本の私小説に影響を与えているとされているが、自然主義文学が調書的な内容なのだとすると、主観性を推し進めた私小説とはまた違うのではないかと思った。 もしかしたら自然主義が日本に入ってきたときに受容の仕方でどこか誤解釈があったのかもしれない。 もし知っている人がいたら教えてください!2020/01/31
ハル
0
セザンヌ→ゾラ→『制作』→自然主義 でたどり着いたけど、時代背景がまだちゃんと頭に入ってないのでさらっと読んで今回はおしまい。 文学だけでなくて演劇や映画など多方面からの自然主義へのアプローチがあって分かりやすかった。2020/01/11