出版社内容情報
英米のみならずミステリ文学の世界を広く紹介。人気のサスペンス小説、近年の潮流についても言及。
内容説明
先駆者ポー、ドイル、黄金期のクリスティはもちろんのこと、ロマン・ノワールのレオ・マレなど―英米のみならずミステリの世界を広く紹介。近代潮流を支えるイタリア・スペイン、その他未邦訳の作家、サスペンス小説にまで言及。ヴァン・ダインによる「探偵小説作法二十則」と作品・作家名の索引を収録。
目次
第1章 ミステリの骨組
第2章 先駆者たち
第3章 問題とその解決
第4章 ロマン・ノワール
第5章 サスペンス小説
第6章 近年の潮流
付録 S.S.ヴァン・ダイン『探偵小説作法二十則』
著者等紹介
太田浩一[オオタコウイチ]
1951年生まれ。中央大学大学院博士後期課程満期退学。フランス文学専攻。中央大学兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
194
19世紀の犯罪小説…例えばバルザックの作品は、都市の不安を描き、近代文明の秘められた部分を探索した。市民は自らの死や運命を国に預けて安穏としているが、「犯人」はそれを簒奪するのだ。こうした作品形式から発展したロマン・ポリシエ(推理小説)は、初め「解明」による「秩序」の回復をテーマとした。が、一方で、ロマン・ノワールのように、主人公が社会の不安と対峙し、行動し、或いは体現し、自ら個我意識の危機に陥っていく作品も現れる。本書は後者に重点を置き、作者の専門や好みであるシムノンやレオ・マレをやや詳しく扱っている。2022/06/23
ブルーローズ
6
4月12日読了。 前半はおなじみ?の英国ミステリの大家の名前がごろごろ。そのあたりも丁寧にまとめられていた。 フランスミステリはあまりなじみがなくて(古典以外は)飛ばし読みしたので、感想が述べられません・・・ 翻訳ミステリで何か探している人にもおすすめ。2012/06/12
きりぱい
6
付録のヴァン・ダイン「探偵小説作法二十則」が面白い。クリスティやチェスタトンなど、何番目と何番目を無視しているだとかの考察があったり、面白いところもあるのだけど、先駆けから近年までそつなく作家が挙がる代わりに人によってはあっさり、全体的にきまじめな感じ。フランス語圏ではミステリはロマン・ポリシエと呼称されるのだそうで、へえ。まあネタバレはありあり。2012/03/01
Ecriture
5
ロマン主義から19c中庸まで、死で幕を閉じる物語の死によって産声を上げたのがロマン・ポリシェ(推理小説)であった。ミステリは死を手段へと還元し、死の超越性の最後の痕跡を剥ぎ取る。かつて起こった犯罪による無秩序を秩序へと変換する初期の謎解き小説から、今まさに生成する無秩序を描きうるロマン・ノワールへと移行し、他の言説と結びつきながら、ミステリは反体制的な力を発揮する。付録のS・S・ヴァンダイン『探偵小説作法二十則』はいろいろと使えそう。情け容赦ないネタバレが降り注ぐので、それを気にする方はご注意を。2013/05/19
缶
3
文字通りポーから現代に至るまでのミステリ文学の系譜を学ぶっことができた。著者は大学教授ということなので単なる作品の批評ということではなく、全体の歴史の流れを示している。序章にあたる1章もよいし、この手の著作にありがちな散らばった感じも受けず、一つの本としてよくまとまっている。書きぶりや語彙もやや学術的な感じでよい。それに、文庫クセジュの翻訳にしては珍しく、とても分かりやすい。2013/11/04