内容説明
紀元後三世紀、ローマ帝国は危機的状況にあった。その帝国を立て直し、さらに数百年間存続させることを可能にしたディオクレティアヌスによる改革事業と、四帝統治体制の成立から結末までを解説する。近年の研究に基づいて、明晰で現実的な政治家としての手腕にせまる。
目次
序論
第1章 ディオクレティアヌスによる権力の掌握と新統治体制の構築
第2章 帝権の新たなコンセプト―四帝統治
第3章 皇帝の役割とディオクレティアヌスの側近たち
第4章 ディオクレティアヌスと中央および属州行政の改革
第5章 ディオクレティアヌスと都市行政の改革
第6章 ディオクレティアヌスと税制・貨幣・財政改革
第7章 ディオクレティアヌスとローマ軍の改革
第8章 ディオクレティアヌスと宗教
第9章 四帝統治の終わりとディオクレティアヌスの死
結論 ある夢の挫折
著者等紹介
大清水裕[オオシミズユタカ]
1979年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(PD)、フランス国立科学研究センター(『碑文学年報』部門)客員研究員。古代ローマ史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スターライト
6
広大な帝国の支配を有効に維持するため、正帝・副帝各2名を配置した「四帝統治」を採用したディオクレティアヌスと、具体的な成果と影響を行政・財政・軍事・宗教などの諸側面から分析した書。著述の根拠となった資料/史料を冒頭で明示し、25年に及んだ四帝統治を詳述。ディオクレティアヌスの「権力」が及んでいた間はそれなりにうまく機能していたようだが、ディオクレティアヌスが自身の年齢と体調の面から正帝の座を降りると、急速に破綻の道を突き進んでいく。他民族からの侵入には悩まされたなかったようだが、権力の継承はやはり難しい。2019/09/08
鐵太郎
3
キリスト教徒にうらまれたために、そのマイナス面や圧制者としての姿が強調されるきらいはあったようです。ギボンの名著ですら、その振り子の揺れが感じられたもの。この著者の視点は、そういったしがらみからを完全に自由に、史料のみによってこの奇妙でしかも偉大な人物を、独自の角度で描いています。内容は無味乾燥な事実の連鎖ですが、楽しめました。歴史には、こんな人物もいたのですよね。2013/05/31
じょあん
2
訳者が「四分」ではなく「四帝」と訳したのには理由があった。本書を読めば、それが非常に優れた訳語であることに気づく。ディオクレティアヌス本人のルーツはもとより、その政策のルーツ、そして四帝統治の推移がコンパクトにまとめられている。本書の後、同じ訳者の『コンスタンティヌス-その生涯と治世-』もセットで読むとより理解が深まる。2021/06/17
Doederleinia berycoides
1
出典が実に詳しくて役立つ。2010/11/13
トミーチェ
0
図書館本。軍人皇帝時代からコンスタンティヌス朝への過渡期に現れた改革者皇帝、ディオクレティアヌス。軍人あがりの実力者、ほぼ同格の権威を持つ正帝ふたり、副帝ふたりによる帝国の分割統治を実現させた。その統治期間を詳細に解説して分かりやすい入門書。これだけしっかり基礎をおさえられる書籍も一般書では珍しくありがたい存在、古代ローマ末期に興味があれば読むべき一冊。2021/02/17