出版社内容情報
『土星の環』と『アウステルリッツ』を繋ぐ幻の散文
2001年のゼーバルトの突然の交通事故死から2年後、遺稿を含む散文やエッセイを編んだのが本書だ。前半はコルシカ島を舞台とした4つの短い未完の散文作品「アジャクシオ短訪」、「聖苑(カンポ・サント)」、「海上のアルプス」、「かつての学舎の庭」を収録している。
1995年、ゼーバルトは『土星の環』の脱稿後にコルシカ島を訪問した。『土星の環』と同様に旅行記の体裁をとった散文作品を執筆するつもりだったが、「お蔵入りにした」と企図の断念を書き送っている。その後の2001年に代表作『アステルリッツ』を上梓したので、この「コルシカ・プロジェクト」は、その2つを繋ぐ幻の散文となったのだ。
後半は「スイス経由、女郎屋へ:カフカの旅日記によせて」、「映画館のカフカ」、「夢のテクスチュア:ナボコフについての短い覚書」、「異質・統合・危機:ペーター・ハントケの戯曲『カスパー』」など、作家が愛した文人についてのエッセイや批評を発表された年代順に収録している。
既刊の『空襲と文学 新装版』を含め、作家の全体像を知るためにはきわめて重要なアンソロジーだ。池澤夏樹氏の「解説、あるいは架空の対話」を巻末に付す。
内容説明
『土星の環』と『アウステルリッツ』を繋ぐ幻の散文。コルシカ島をめぐる未完の作品「アジャクシオ短訪」「聖苑」など四篇のほか、カフカ、ナボコフ、ハントケなど作家が愛した文人についてのエッセイ・批評を収録。
目次
アジャクシオ短訪
聖苑
海上のアルプス
かつての学舎の庭
異質・統合・危機―ペーター・ハントケの戯曲『カスパー』
歴史と博物誌のあいだ―壊滅の文学的描写について
哀悼の構築―ギュンター・グラスとヴォルフガング・ヒルデスハイマー
小兎の子、ちい兎―詩人エルンスト・ヘルベックのトーテム動物
スイス経由、女郎屋へ―カフカの旅日記によせて
夢のテクスチュア―ナボコフについての短い覚書
映画館のカフカ
著者等紹介
ゼーバルト,W.G.[ゼーバルト,W.G.] [Sebald,W.G.]
1944年、ドイツ・アルゴイ地方ヴェルタッハ生まれ。フライブルク大学、スイスのフリブール大学でドイツ文学を修めた後、マンチェスター大学に講師として赴任。イギリスを定住の地とし、イースト・アングリア大学のヨーロッパ文学の教授となった。散文作品『目眩まし』『移民たち 四つの長い物語』『土星の環 イギリス行脚』を発表し、ベルリン文学賞、J・ブライトバッハ賞など数多くの賞に輝いた。遺作となった散文作品『アウステルリッツ』も、全米批評家協会賞、ハイネ賞、ブレーメン文学賞を受賞し、将来のノーベル文学賞候補と目された。エッセイ、評論作品も邦訳刊行されている。2001年、住まいのあるイギリス・ノリッジで自動車事故に遭い、他界した
鈴木仁子[スズキヒトコ]
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退。椙山女学園大学教員。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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