出版社内容情報
ヒトラーが政権に就く前後の重要な一次史料
ドイツの小都市の知識階級の家庭に生まれ育ったシャルは、15歳から22歳まで詳細な日記をつけていた。時代はヒトラーが政権に就いた前後であり、日記の記述の中心は青少年期を決定づけた「ヒトラーユーゲント」との関係だ。シャルはナチズム運動に身を捧げ、総統を崇拝して成長する若者の生活と心情、各組織や団体の内情を生々しく筆記しており、編集・解説・注釈が補足された本書は、重要な一次史料といえる。
シャルは、ヘルマン・ヘッセの親友でナチに嫌悪を抱いていた神学教師の父、民主主義、「腐りきって崩壊した世界」への反抗的な行動に及ぶ。日記にはますます人種差別的で、外国人を敵視する響きが混じるようになる。やがてシャルは従軍するも重傷を負い、同志たちも非業の死を遂げた。戦後、シャルは戦争の非人間性とヒトラーの狂気に目を開かされたものの、自らのヒトラーユーゲント体験に完全に距離を置くことはできなかった。
プロパガンダに操られ、総統への崇拝、人種差別に憑かれたシャルの姿は、かつて戦争に巻き込まれた日本の若者と重なって見える。編著者はハンナ・アーレント全体主義研究所ほかで活動する歴史学者。
内容説明
「僕はいつも我らがドイツとこの運動、そしてアドルフ・ヒトラーのことを考えないわけにはいかない」(19歳の日記より)。ナチズム運動に身を捧げ、総統を崇拝して成長する若者、フランツ・アルブレヒト・シャル。彼が15歳から22歳まで、生活と心情、人種差別と歪んだ愛国心、各組織や団体の内情を生々しく筆記した一級の史料。カラー口絵8頁収録、編著者による解説と注釈を補足。
目次
第1章 序文(日記をめぐる顛末;「闘争時代」のヒトラーユーゲント;史料としてのシャルの日記)
第2章 日記(一九二八年~一九三〇年―NS運動への道程;一九三一年―ある若き活動家;一九三二年―党同志 ほか)
第3章 フランツ・アルブレヒト・シャル 一九三五年~二〇〇一年(アドルフ・ヒトラー・シューレの教師となって;ゲシュタポに逮捕された父;戦中戦後 ほか)
著者等紹介
ポスタート,アンドレ[ポスタート,アンドレ] [Postert,Andr´e]
ハンナ・アーレント全体主義研究所その他で活動するドイツの歴史学者
須藤正美[ストウマサミ]
1956年生まれ。東京都立大学人文学部博士課程単位取得満期退学。ドイツ文学、特にカフカをはじめとするユダヤ系文学者の作品、ドイツ人とユダヤ人の関係史などを研究。早稲田大学(2010年まで)、中央大学、明治大学、慶應義塾大学などで講師を務める傍ら、文芸・実務翻訳に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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