出版社内容情報
「戦争前夜」の危うい均衡?
アメリカのペンス副大統領による「新冷戦」演説(2018年10月)は世界中に衝撃を与えた。この演説が重要なのは、トランプ大統領の対中スタンスにとどまらず、米国全体の不満を代弁したからである。
この流れは、米中貿易戦争やコロナ禍を経て、いっそう強化されている。ポンペオ国務長官が20年7月、これまでの対中関与政策を全面否定し、「新冷戦」演説からさらに踏み込んだ発言を行ったのは記憶に新しい。
「戦争前夜」(グレアム・アリソン)とも形容される米中関係が時代の基調となるのは間違いない。他方、「大国の論理」という眼鏡だけでは現状を大きく見誤るだろう。安易な陰謀論や中国脅威論はその産物であるが、いつも現実はより複雑である。
本書は、北東アジアという観点から中国外交を再検証する試みである。この地平から眺めると、「新冷戦」は全く異なる相貌を帯びてくる。
「一帯一路」でロシアの顔をうかがい、北朝鮮を制御できず、安倍外交を警戒する中国の姿がそこに浮かぶ。緊迫する中台関係も「翻弄されたのは中国か台湾か」見極めが難しい。アジア経済研究所による、覇権争いの「罠」に陥らないための最新の分析。
内容説明
衝突は不可避なのか?複雑に絡む利害、「戦争前夜」の危うい均衡…。ポスト・コロナ、覇権争いの「罠」。
目次
序章 習近平政権をめぐる国際関係
第1章 対立が先鋭化する米中関係―「米中新冷戦」の幕開けか
第2章 再構築へ動きだした日中関係―米中パワーバランスの変化の影響のなかで
第3章 同床異夢の中朝関係―北朝鮮の核開発問題をめぐる齟齬
第4章 中ロ蜜月の主導権―「一帯一路」構想と新疆問題のもたらす影響
第5章 顕在化する米中覇権争いと中台関係―翻弄されたのは中国か台湾か
第6章 転換期にある「一帯一路」構想と経済外交―日中経済関係の新展開は可能か
終章 「米中新冷戦」と中国外交の行方
著者等紹介
松本はる香[マツモトハルカ]
1972年生まれ。米ジョージタウン大学大学院歴史学部外交史専攻修了・修士、東京女子大学大学院人間科学研究科歴史文化研究領域博士後期課程修了・博士。日本国際問題研究所研究員などを経て、2005年より日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、現在、同地域研究センター東アジア研究グループ長代理。台湾・中央研究院欧美研究所、北京大学国際関係学院の客員研究員を歴任。専門分野は、東アジア国際関係史、中国外交、台湾をめぐる国際関係(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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