出版社内容情報
皇女にして、西洋古代・中世でただひとりの女性歴史家
歴史学は何のためにあるのだろうか? 私たちがより良い未来を生きるためである。しかし辛い日々を送る者にとって、歴史学が生きる糧となることもあった。歴史学が男の学問だった西洋古代・中世にあって、アンナ・コムネナは、不幸な我が身への慰めを歴史学に見いだした。ビザンツ帝国中興の祖である父アレクシオス一世の治世を描いた『アレクシアス』は、こうして誕生した。
権威ある「緋色の生まれ」としての誇り。皇帝である父への敬愛。皇妃となっていたはずの人生。ヨハネス二世となる弟との確執。アンナは、政治や戦争といった公のことがらについて真実を伝えるのが歴史家の務めであることを承知のうえで、自身の人生や溢れくる思いまでも歴史書に盛り込んだ。
本書は、第一部でアンナ・コムネナの数奇な生涯を語り、第二部では、ビザンツ歴史文学の最高傑作と言われる一方で批判も受けてきた『アレクシアス』を、ビザンツの歴史学や歴史書の性格、ビザンツ知識人にとって歴史学とは何だったのかという文脈から分析する。そして、長らく指摘されてきた年代の誤りの謎や、世界の翻訳者たちが苦心してきた不可解な記述の謎をも考察していく。
内容説明
歴史学はなんのためにあるのか。皇女にして、西洋古代・中世で唯一の女性歴史家。歴史が男の学問とされていた時代に、ビザンツ帝国中興の祖である父アレクシオス一世の治世を記した皇女の生涯をたどり、その著作を分析する。
目次
第1部 生涯(「緋色の生まれ」;幻想の皇帝歓呼;弟ヨハネス;少女時代への別れ;政略結婚;父の死と帝位継承問題;陰謀と和解;瀟洒な独居房;学問の世界に;『アレクシアス』と死)
第2部 作品(越境する歴史学―執筆戦略;戦い続けた「平和の人」―願いを込めて;「なぜ?」という問いかけ―原因・運命・摂理;歴史家の仕事―史実の追究)
著者等紹介
井上浩一[イノウエコウイチ]
京都大学文学部卒、同大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。大阪市立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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