出版社内容情報
死や別離に彩られ、激しい苦悩と挫折を重ね、空白期を経るたびに異なる世界に脱皮していく作家の姿を、新たな視点で捉え直す。ぐっと太宰が近づいてくる
2018年6月13日は太宰治没後70年にあたり、2019年6月19日は生誕110年を迎え、東京・井の頭公園には新たな文学館が開設されるという。
現在もなお多くの人々に読み継がれる太宰治だが、自分の人生を啄むようにして小説を書いてきたこの作家には、作品を執筆しない三回の空白期間があり、その空白はいずれも「死」や「別離」に彩られていた。本書は数ある先行書籍があまり指摘してこなかったこの「空白期」にスポットを当て、そこから新たな作家像を探ろうという意欲的な試みに満ちた1冊である。
最初の空白は、昭和2年春、旧制弘前高等学校に進学してからの1年ほどで、翌年5月に「無間奈落」を発表するまで一つも創作を発表していない。
二度目の空白は、昭和5年4月に東京帝国大学仏文科進学後、「学生群」を7月から11月まで連載した後、昭和8年2月に短編「列車」を発表するまでの2年以上の長い期間である。
第三の空白は昭和10年鎮痛剤中毒に陥って苦闘生活が続き、井伏鱒二の紹介で石原美知子と結婚するまでの時期。この三つ目の空白を経て、結婚を機に生活を建て直し、「富嶽百景」に始まる明るい佳品が生まれる。
読売新聞名物記者の筆さばきが、ぐっと太宰を読者に近づけていく。
鵜飼 哲夫[ウカイ テツオ]
著・文・その他
内容説明
桜桃忌70年。空白期を経るたびに脱皮していく作家の姿を、読売新聞名物記者が、新たな視点で捉え直す。
目次
序章
第1章 空白以前(津軽・金木町;叔母キヱと子守のタケ ほか)
第2章 第一の空白(旧制弘前高等学校時代;「細胞文藝」の創刊と挫折 ほか)
第3章 第二の空白(帝大入学・四方八方破れかぶれ;実家からの分家除籍 ほか)
第4章 第三の空白(入院;初代の不義 ほか)
終章
著者等紹介
鵜飼哲夫[ウカイテツオ]
1959年名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1983年読売新聞社に入社。1991年から文化部記者として文芸、読書面を担当。現在読売新聞東京本社編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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