出版社内容情報
最新史料から見える「人間レーニン」とは?妻や愛人、同志や敵、人物模様と逸話を通して革命の舞台裏と意外な素顔に迫る傑作評伝!
内容説明
「善を望みながら、悪を生み出した」革命家の悲劇。10月革命から志半ばの病死まで、人間模様と逸話を通して、その人生と時代を活写する傑作評伝!
目次
革命―第一幕
封印列車
フィンランド駅へ
政治空白
「平和、土地、パン」
戦争の利得
捨て身の賭け
七月の日々
逃亡の身
革命―第二幕〔ほか〕
著者等紹介
セベスチェン,ヴィクター[セベスチェン,ヴィクター] [Sebestyen,Victor]
ハンガリー・ブダベスト生まれ。幼少時に家族とともに難民として母国を離れる。ロンドンの『イブニング・スタンダード』紙で主任論説委員を務め、『ザ・タイムズ』『デーリー・メール』など数多くの新聞社で活躍。東欧共産主義政権の崩壊、旧ユーゴスラヴィア紛争などを報道
三浦元博[ミウラモトヒロ]
共同通信社を経て、大妻女子大学社会情報学部教授
横山司[ヨコヤマツカサ]
共同通信社ナイロビ、ロンドン、香港各特派員を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
22
(上巻からの続き)本書P 127に「善を望みながら……悪を生み出したことだ」という言葉が記されている。これは、ロシア革命によって権力を握ったレーニンを象徴している。レーニンは、圧政を敷いた皇帝を打倒し自由で平等な社会を望んだ。だが、自分と相容れない者は容赦なく排除していった。革命後に創設した秘密警察チェカーを使った対立勢力の摘発。白軍との内戦における農村部への穀物挑発。ロシア革命で協力したクロンシュタットの水兵による反乱における鎮圧。飢餓で苦しむ農民たちの反乱に対して毒ガスを使った弾圧など(続く)2022/01/15
健
6
地上に楽園を作ろうとして地獄を作ってしまった革命家の評伝。レーニンに寄り添って共産主義革命が描かれていて読み応え十分だ。レーニンでなければ革命を完遂させることは出来なかったのは分かるけど、その結果があの共産党独裁国家だったというのは皮肉な話だ。より穏健な共産主義者が実権を握っていたら、歴史は変わったのだろうか。スターリンでさえもレーニンの苛烈な政策に反対していたと言うのは驚きだけど、結局、レーニンそして後継者たちはどういう国を作りたかったのだろう。様々な意味で深く考えさせられる本だった。2019/02/02
田中峰和
5
強欲のカストロと同類だと思っていたがレーニンの方がはるかにまし。他のボリシェビキ幹部が貴族さながらの奢侈や贅沢に走っても、彼は妻とともに常に質素であった。だが、ニコライ二世とその一族郎党を処刑したのはいただけない。記録が残らないようにしているが、レーニンの指示であったことは確実。追放後、1年以上経って銃殺されたのではたまらない。元々軽視していた農民への対処もひどかった。富農の資産調達といいながら、貧農から種籾まで巻き上げている。白軍についたチャーチルも酷い。毒ガスを提供して赤軍を苦しめた。ヒトラー同様だ。2018/04/05
sakesage
2
東欧現代史家でありジャーナリストであるセベスチェン渾身のレーニン伝、質量ともに十二分であるが、訳が大変読みやすいので飽きなかった。封印列車でレーニンは、イネッサ(同志であり恋人)を筆頭名簿の一番最初に記した話といい革命後のクロンシュタットや正教会の反乱など手に汗握る話といい史料に基づいてレーニンの素顔を綴る。「個人的な事は政治的な事である」というフェミニストの言葉を革命家に限らず、政治家は肝に命ずるべきだろう。レーニンを照射しながら、100年たっても色褪せないロシア革命の素顔に迫る。2018/03/15