出版社内容情報
クレムリンの皇女は父親の名前の重圧を背負い、過酷な運命から逃れようとした……。まさに「20世紀史」を体現した波瀾の生涯。
内容説明
「あなたがスターリンの娘に生まれたとしよう。それは現実にはすでに死んでいることを意味している」父親の名前の重圧を背負い、過酷な運命から逃れようとした波瀾の八十五年。生誕から、母親の死、粛清の嵐、スターリンの死、結婚と離婚、アメリカ亡命まで、まさにもう一つの「20世紀史」。写真多数収録。
目次
プロローグ 亡命劇
第1部 クレムリンの皇女(陽の当たる場所;母のない児;女主人と従僕 ほか)
第2部 ソ連の現実(亡霊の復活;大元帥閣下の娘;雪どけ以後 ほか)
第3部 アメリカへの亡命(イタリア風コミック・オペラ;外交狂騒曲;弁護士の出番 ほか)
著者等紹介
サリヴァン,ローズマリー[サリヴァン,ローズマリー] [Sullivan,Rosemary]
詩人、短篇小説作家、伝記作家、文芸評論家、書評家、コラムニスト。トロント大学の名誉教授であり、グッゲンハイム財団、カマルゴ財団、トルドー財団から奨励金を得ている。また、ローン・ピアス勲章の受章者であり、文学と文化への貢献を認められてカナダ王立協会から表彰され、カナダ四等勲爵子の称号を有する
染谷徹[ソメヤトオル]
1940年生。東京外国語大学ロシア語科卒。ロシア政治史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
48
ロシア革命の後、皇帝一家は姿を消した。にもかかわらずクレムリンの皇女と呼ばれた女性がいた。1926年、スターリンとその妻ナージャの間に生まれた「クレムリンの皇女」スヴェトラーナ・アリルーエワが、その人だ。国を動かす男の娘ならば、わがまま放題に育った暴君では?と思いがちだ。幾分かはあたっている。しかし彼女は辛い体験もしている。 母親が彼女が6歳の時に死んでいる。最高権力者の妻が自殺などというスキャンダルを広めるわけにはいかないため、スヴェトラーナは長い間母の死因を知らずに育った。 2017/12/03
kei
24
スターリンには前妻との子で長男のヤーコフ、次男のワシーリー、長女のスヴェトラーナがいた(他に隠し子あり)。本書はこのスヴェトラーナの一生を追うことによってスターリンとその家族の生きざまが描かれている。子を可愛がり過ぎる独裁者もいるがスターリンは逆で長男、次男は冷遇される。娘のスヴェトラーナも、もちろんソ連では超上流階級に所属するが、贅沢というよりは質素に過ごしていた面が描かれている。上巻は冒頭部分はスヴェトラーナが亡命するところから書かれ、そこから時計が巻き戻り幼少時代~亡命前後までが書かれている。 2019/07/21
湖都
14
スターリンの実の娘の伝記。上巻では、独裁者の娘でありながら殆どその存在を知られず、それでいて特別扱いをされ続けた前半生を描く。母の自殺、家族にも独裁者であり続けた父、家族の愛に恵まれない子供時代。周りに監視され、環境から抜け出すために繰り返す結婚と離婚。父がフルシチョフに批判された時には国民から冷たい目で見られ、常に父の影響から抜け出ることができなかった人生は哀れである。時に高慢で突っ走る性格もこの不安定な環境で形成されてしまったのか。後半の行動は随分自己中心的で同情できなくなっていったのだが…。2019/12/26
ケニオミ
14
子供の性別によって影響の仕方が異なると思いますが、独裁者を父親に持つことは、子供にどのような影響を与えるのだろうか。兄は父親とは別のアイデンティティを確立することができず、酒におぼれ若くして病死してしまう。ごく幼い頃はことある毎に一族が集まり、幸せな時を過ごしていたスヴェトラーナは、父親が権力を確立する過程で、大好きだった親戚のおじさんやおばさんが次々にいなくなることを経験する。成長するにつれ、権力の維持のため、敵と思われる人を粛清する父親の本性を分かるようになり、下した決断がアメリカへの亡命だった。2018/01/25
mustache
7
翻訳もなめらかで(もっとも3箇所の校正ミスを発見。白水社でもこれかな?!)とても面白い。スターリン自身の縁者までも次々に捕らえられ、あるいは処刑され、あるいは流刑地に送られる、粛清の恐ろしさを改めて感じる。その中で正気を保つスベトラーナの人物像が活写されている。2019/03/08