出版社内容情報
亡命作家の記憶と生
パリの亡命文壇でナボコフと並び称されるも、ソ連解体前後の再評価まで、長らく忘れられていた作家ガズダーノフの代表作二篇。20世紀を中心に、ロシア語で書かれた異形の作品を紹介するシリーズ〈ロシア語文学のミノタウロスたち〉第一巻。
クレールとの夕べ:作家自身を思わせる語り手の「ぼく」は、十月革命前に知り合ったフランス人女性クレールとパリで10年ぶりに再会する。長いあいだ焦がれていた彼女との関係がついに現実になったとき、「ぼく」は過去の記憶――孤独な子ども時代や混乱した内戦の戦場――に包まれる。語り手が意識の流れを忠実に追って内的独白を連ねていく文体はロシア文学では目新しく、当時の書評の多くがプルーストの影響に言及した。
アレクサンドル・ヴォルフの亡霊:語り手の「ぼく」は、かつて戦場である兵士を殺したときの記憶と見紛う記述を、見知らぬイギリスの作家の短篇の中に見つける。それは自分が殺した人物が書いたとしか考えられない――こうして、謎の作家「アレクサンドル・ヴォルフ」をめぐる奇妙な冒険が始まる。罪と贖い、偶然と運命、生と死を実存的に問い、ドストエフスキーの『分身』をも彷彿とさせる秀作。
内容説明
亡命ロシア文壇でナボコフと並び称された作家の代表作二篇、本邦初訳。追憶に輝くクレールという未来、戦場で殺したヴォルフという傷―ロシア革命で敗走する白軍に身を投じ、パリへと流れる「ぼく」の記憶の物語。
著者等紹介
ガズダーノフ,ガイト[ガズダーノフ,ガイト] [Газданов,Гайто]
1903‐1971。サンクト・ペテルブルグでオセット人の両親のもとに生まれる。ハルキウ(ハリコフ)の中学在学時に革命が勃発。16歳で白軍に入隊し、ペレコープ地峡での激戦を経験。ブルガリアで中学を修了し、1923年に暮れに、亡命ロシア人が集まっていたパリに到着する。パリでは肉体労働者や夜間のタクシー運転手、学生、フリーメイソンとして生きるかたわら、1930年に第一長篇『クレールとの夕べ』を発表。同地の亡命文壇で有望な新人と目される。第二次大戦では対独レジスタンスに参加。戦後は冷戦下のミュンヘンで共産圏向けのラジオ放送に関わった。代表作に『夜の道路』(1952)など
望月恒子[モチズキツネコ]
北海道大学名誉教授。専門は亡命ロシア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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