出版社内容情報
インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール――東南アジア五カ国の経験を掘り下げ、デモクラシーの未来を展望する。
内容説明
自由な競争を保障することと安定的な秩序を確立すること。いずれも民主主義にとって必要でありながら、両者のバランスを取るのはそう簡単ではない。この二つの間の緊張関係に翻弄され、民主主義は、結局のところジレンマに陥ってしまう。実証主義的な比較政治学の蓄積にもとづき、民主主義の困難な歩みを経験してきた東南アジア諸国を具体的な事例として、民主主義一般に通底する問題を解き明かす。
目次
第1章 民主主義を分析する
第2章 政治体制の形成
第3章 民主主義の不安定化
第4章 選挙が支える権威主義
第5章 民主主義と社会経済的格差
第6章 パーソナリティと分極化の政治
著者等紹介
川中豪[カワナカタケシ]
1966年生まれ。早稲田大学法学部卒。修士(法学)早稲田大学、博士(政治学)神戸大学。1993年にアジア経済研究所に入所し、フィリピン大学、スタンフォード大学、アテネオ・デ・マニラ大学の客員研究員、アジア経済研究所地域研究センター長などを経て、現在、アジア経済研究所地域研究センター上席主任調査研究員。専門は、比較政治学、新興民主主義研究、政治制度論、東南アジア政治(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とある本棚
7
比較政治学の観点から、東南アジア5カ国(フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール)の民主主義を分析した一冊。民主主義における自由な競争と秩序維持のジレンマを中心的な命題としており手堅い一冊。他方、事例分析の部分が表層的な印象も受け、もう少し踏み込みが欲しかった。通読することで、制度がアクターをどう規定するか、またアクターが制度にどう働きかけるかという制度とアクター間の相互作用を見る目が養われる。2024/05/16
Go Extreme
1
民主主義: 政治体制としての民主主義 民主化→民主主義のあり方 競争と秩序のバランス、制度の役割 政治体制形成: 民主主義誕生と挫折 民主主義の不安定化: 制度からの逸脱 均衡としての民主主義 選択民拡大 指導者と街頭行動 選挙が支える権威主義: 民主主義と権威主義のハイブリッド 選挙システムとメリトクラシー 支配政党と権力分有 民主主義と社会経済的格差: 政治的平等と社会経済的不平等 選好の多次元性、政治史上の不完全性、国家の統治能力欠如 パーソナリティと分極化の政治: 政治秩序のゆらぎ 民主主義の後退2022/07/03