出版社内容情報
ノイシュタット国際文学賞受賞者であり、ロシア・アヴァンギャルドの研究者としても知られるクロアチア語作家ウグレシッチ。惜しくも最後の長篇となった本作は、いわゆるオートフィクションに分類されうるもので、作者を思わせる語り手は、1920年代から現代まで、ロシアからイタリア、クロアチア、イギリス、アメリカ、そして日本まで、トリックスターとしてのきつねさながらに、テクストの中を自在に駆けていく。作家とはだれか、物語とはなにか、事実と虚構、記憶、女性、戦争、越境、ナショナリティ……、あらゆる文学的主題を語る糸口となるのは、ボリス・ピリニャークの日本を扱った短篇「物語がどのように生まれるかの物語」だ。実在する文学作品や作家のみならず、存在しない文学作品や作家をめぐって縦横に展開するその語りのなかで、さまざまな周縁的存在の声が回復されていく。文学が物語を伝播する媒体なのだしたら、人間の生もまた「物語」というウィルスに冒されたテクストなのかもしれない。だが文学は同時に、物語に抗わんとするだろう。文学への愛とアイロニーに満ちた、語り手の鋭くも誠実な思考の軌跡をともに辿るかのような体験をぜひ。
内容説明
作家とはだれか、物語とはなにか、事実と虚構、記憶、女性、戦争、越境、ナショナリティ…文学をめぐる冒険、その愛とアイロニー。ロシア・アヴァンギャルド研究者としても知られるクロアチア語作家の長篇、待望の翻訳。ピリニャークの日本滞在記を糸口に、あらゆる文学的主題が縦横に語られるオートフィクション。
著者等紹介
ウグレシッチ,ドゥブラヴカ[ウグレシッチ,ドゥブラヴカ] [Ugresic,Dubravka]
1949‐2023。ユーゴスラヴィアで生まれ、アムステルダムで執筆を続けたクロアチア語作家。ザグレブ大学で比較文学とロシア文学を学び、卒業後はザグレブ大学文学理論研究所に勤め、ロシア・アヴァンギャルドの研究に従事した。ユーゴスラヴィアでもっとも権威あるNIN文学賞を女性としてはじめて受賞するも、ユーゴスラヴィア内戦に際し排他的なナショナリズムを批判して激しい攻撃にさらされ、1993年に「亡命」。その後、作家として国際的に高い評価を受け、1998年のオーストラリア国家賞のほか、長篇『バーバ・ヤガーは卵を産んだ』(2008、未訳)でジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞に、2016年にはノイシュタット国際文学賞に輝くなど、数多くの文学賞を受賞している
奥彩子[オクアヤコ]
共立女子大学教授。専門はユーゴスラヴィア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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