内容説明
実験室は十九世紀が生んだもう一つの人工楽園だった。芸術に「科学の正確さ」を求めた自然主義者はもちろん、純粋な美を目指した象徴主義者やデカダン派に至るまで、十九世紀の芸術家たちは「美のテクノロジー」に憑かれていた。マラルメはすべてを計算して詩から偶然を排除せんとし、フローベールは考古学的考証に耽り、ゾラは芸術家は現象をうつす写真家でなければならないと説いた。産業社会に反逆、あるいは逃避したはずの作家たちが、実は彼らの忌避したテクノロジー思考に支配されていたことをあばき、近代における「方法の制覇」「視覚の専制」、そこから生じる距離と疎外の問題を論じて、文化史の革命的書き換えを成し遂げた名著。待望の復刊。
目次
1 方法の征覇
2 ロマン主義者と唯美主義者
3 ミメシス―視覚的なるもの
4 疎外された世界
5 参加
6 接近
著者等紹介
サイファー,ワイリー[サイファー,ワイリー] [Sypher,Wylie]
アメリカの英文学者・文化史家。1905年、ニューヨーク州マウント・キスコ生まれ。アマースト・カレッジ卒業後、ハーヴァード大学で博士号取得。元シモンズ・カレッジ教授。主に文学と美術に拠ってルネサンス期から二十世紀に至る西欧精神史、文化史研究を壮大なスケールで展開した。1987年没
野島秀勝[ノジマヒデカツ]
1930年生まれ。東京外国語大学卒業、東京大学大学院英文科博士課程修了、お茶の水女子大学名誉教授。2009年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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