出版社内容情報
左派の退潮が言われて久しい。
世界中が新自由主義に覆われ、格差や貧困がクローズアップされたにもかかわらず、左派への支持は広がらなかった。
いや、むしろ左派への風当たりはより強くなったと言えるかもしれない。一方、右派や極右はますます支持基盤を拡大しているように見える。
左派退潮の分岐点はどこにあったのか? 左派を再興することは果たして可能なのか?
「左派を再び偉大に」することを狙う本書は、この問いに正面から答える。
1970年代、先進資本主義国では資本の収益性が劇的に低下していた。危機感を抱いた支配層は、福祉国家下の「階級的妥協」を棚上げして露骨な階級闘争を仕掛ける。
新自由主義的な再構築で起こったことは、決して国家の「衰退」や「空洞化」ではなく、〈脱民主化〉による国家主権の権威主義化だったのだ。
「国家の死」を寿いだ左派はここを大きく見誤ってしまった。そして、40年にわたり支配層から仕掛けられた階級闘争によって周縁化され、収奪された人々は極右運動に引き寄せられていった……。ポスト新自由主義世界を見通す左派再興の処方箋。
内容説明
国家主導の新自由主義プロジェクトに対して、左派が取り得る道は「国家」を取り戻す、その在り方にある。MMTの旗手による左派再興論。
目次
序論 左派を再び偉大に―Make the Left Great Again
1 大転換の再来―ケインズ主義から新自由主義、そしてさらにその先へ(破壊された楽園―ケインズ主義の「完全雇用」時代に対する批判的評価;運命づけられていた失敗―ケインズ主義の危機と新自由主義の台頭を理解する;その選択肢はもはや存在しない―イギリス、そしてイギリス労働党はいかにしてマネタリズムの罠に嵌まったか;パリ・コンセンサス―フランス左派と新自由主義ヨーロッパの誕生;国家はなくならない―国家主導のプロジェクトとしての新自由主義;わが亡きあとに洪水よ来たれ―ポスト新自由主義の時代が到来しているのか?)
2 二十一世紀のための進歩的な戦略(主権に関する進歩的なビジョンを目指して;政府は家計のようなものではない―現代貨幣理論入門;あなたのための仕事がある―ジョブ・ギャランティがベーシックインカムよりも優れている理由;われわれには(中心となる)計画がある―再国営化の主張)
結論 国家へ回帰せよ
著者等紹介
ミッチェル,ウィリアム[ミッチェル,ウィリアム] [Mitchell,William]
1952年生まれ。通称ビル・ミッチェル。豪ニューカッスル大学教授、完全雇用と公平センター(Centre of Full Employment and Equity:CofFEE)所長。Macroeconomics(2019:白水社から刊行予定)を共に著したL・ランダル・レイ、マーティン・ワッツらとともに、現代貨幣理論(MMT)の提唱者の一人である
ファシ,トマス[ファシ,トマス] [Fazi,Thomas]
1982年生まれ。ライター、ジャーナリスト、ウェブ雑誌UnHerdに継続的に執筆するコラムニスト。エンリコ・パレンティ監督とともに、世界の米軍基地を撮った映画『誰も知らない基地のこと』(2010年)では、沖縄を取材し日本を視野に入れた
中山智香子[ナカヤマチカコ]
1964年生まれ。ウィーン大学大学院経済学研究科博士後期課程修了(社会・経済学博士)。早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。専門は現代経済思想、社会思想史
鈴木正徳[スズキマサノリ]
1964年生まれ。早稲田大学法学部卒業。1987年、第一勧業銀行入行。2002年より、複数の投資ファンド系資産運用会社に勤務の後、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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がんちゃん