内容説明
時代はゴールドラッシュ、アメリカ西部の荒々しい自然を背景に、愛と憎しみ、希望と絶望、怒りと悲しみ…そして、殺人が起きた。素朴なハサウェイ少年の初恋の行方は?ルクス児童青少年文学賞受賞作品。
著者等紹介
ベーレンス,カティア[ベーレンス,カティア][Behrens,Katja]
1942年、ベルリン生まれ。60年、翻訳家として出発し、ウィリアム・バロウズやヘンリー・ミラーなど、アメリカ文学の翻訳がある。編集者を経た後、78年から本格的に作家として活動を始める。『ハサウェイ・ジョウンズの恋』は、2003年度のルクス児童青少年文学賞を受賞、ドイツ青少年文学賞候補作品
鈴木仁子[スズキヒトコ]
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退。椙山女学園大学准教授。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紅はこべ
99
確か課題図書に選定された本。こう言う形で出会えた生徒は幸せ。ハサウェイは必ずしも完璧じゃない。先住民を赤肌と呼び、差別意識を持っている。恋によってそれが正されたかというと、そうとは言い切れないが。ゴールドラッシュ時代のアメリカをドイツの作家が書くって驚いたが、元々アメリカ文学の翻訳家だったのね。狭い地域でやけに殺人が多いが、この時代のこの地域では珍しくなかったのか。実際のハサウェイは読み書きを身につけることができたのかな。ハサウェイの造った話、もっと読みたかった。2019/09/06
うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)
65
アメリカのゴールドラッシュの時代、父親と一緒にローグ河のほとりにやってきたハサウェイは、ラバ3頭を引き連れて近隣に住む人々に郵便や砂糖、塩や鉄砲の弾薬、そして物語を届けた・・。ルクス児童青少年文学賞受賞。河の流れのようなお話でした。初めて芽生えた恋にキラキラと輝いている時もあれば、嫉妬の渦に翻弄される日もある。そして二人の気持ちが通じ合った穏やかな流れの日もあれば、殺人事件が起こった時のように濁流が渦巻く日もありました。意外とハサウェイの紡ぎだす物語が少なかったのが残念でした。★★★2012/07/01
藤月はな(灯れ松明の火)
57
実在した、愛すべきホラ吹き爺様の幼き恋物語。ゴールドラッシュで潤ったアメリカは生馬の目を引っこ抜く場。金銭的な格差により、強盗、盗み、横行し、金が返せないと殺され、金があるから無罪になる場所でもあった。そんな時代でハサウェイがホラを吹いたのはツラい浮世でも愛や優しさはあると信じたかったから。物語りはいつも人の生きる支えになる。ネイティヴ・アメリカンへの酷い扱いや呼び方へハサウェイに注意するフロラが素敵。そしてそんな彼女の父でイギリスの階級社会から駆け落ちした呑んだくれのジム父さんの最後の計らいが粋である。2016/06/06
あおさわ
17
表紙の美しさに手にとってみましたが、 少年の純愛のみならずゴールドラッシュに疲れ果てた人々の殺伐とした感情が淡々と、 しかしはっきりと描かれていて驚きました。 大自然の光景は眼に浮かぶほどにみずみずしく 表現されていて、風景は美しいのですが さらっと始まる殺しがヒヤリとさせ、 でもそれすら大自然の中での日常のように感じさせる。 恋物語ではありますが、 こんな人間たちがこんな風に生きている、というただその時間の流れ、風景を見せてもらっている。 神様の視点の物語かなと思いました。2017/08/15
杏子
12
課題図書だからというのではなく、純粋に自分の興味で読んでみた。タイトルから想像していたのとは違って、話的にはとても地味だった。高校生がこれを読んで面白がるとは思えない。どちらかといえば、読むことに慣れた大人の読者にこそ、という気がする。西武開拓時代のアメリカの、厳しい自然描写が淡々と描かれ、ハサウェイ・ジョウンズの初々しい恋、起こった凶々しい事件、とさまざまな事柄が時の流れとともに流れていく。ハサウェイ・ジョウンズは実在の人物だというが、その人生の片鱗を描いた本書はしみじみと深い。彼の語る話もまた魅力的。2010/07/15