出版社内容情報
尋常ならざる知性の持ち主たちの奮闘記
演説と文章のプロフェッショナルたちの波瀾の生涯
世俗の支配層が武人とほぼ同義の西欧中世と違い、ビザンツ帝国では文官・文人が存在感を示した。彼らは、美辞麗句ばかりで中味が空っぽとか、言っていることと腹のなかがまるで違う二枚舌だとか、同時代の西欧人から現代の研究者に至るまで、ことあるごとに非難を浴びせられ、「ビザンツ的」と言えば、権謀術数や虚飾や空虚な議論の代名詞のようなイメージが出来上がってしまっている。だが、それはプロの修辞家として、依頼された仕事を誠実に果たした結果であり、個人としての著作や生き方には、また別の顔があった。
本書は、八世紀のコンスタンティノープル総主教ゲルマノス一世から帝国滅亡の十五世紀のプレトンまで十四人を取り上げ、マケドニア朝期の反骨の聖職者アレタス、たび重なる政変を泳ぎ切りつつ膨大な著作をあらわしたプセルロスら、毀誉褒貶入り乱れた異才たちの人生を活写する。そして、固定観念から少し離れて、偏見なしに実際のビザンツ知識人の姿に触れ、言葉の力を武器に戦い抜いた生身の彼らの、暮らしと思想をできるだけ彼らが生きた時代のなかで浮き彫りにすることをめざしている。
【目次】
地図
1 コンスタンティノープル/2 十一世紀半ばのビザンツ帝国
はじめに
1 先駆的な総主教たち
一 ゲルマノス一世――イコノクラスムに抗した聖人総主教
二 ヨハネス七世グラマティコス――総主教は妖術使い
三 フォティオス―― 「マケドニア朝ルネサンス」の開幕
2 マケドニア朝ルネサンス期の首都の文人
一 カイサレイア府主教アレタス――愛書家教会人の武闘派人生
二 「逸名の教授」――市井の文人の不穏な日常
3 「ビザンツの平和」の光と影
一 ヨハネス・ゲオメトレス―― 「再征服」時代の桂冠詩人
二 クリストフォロス・ミュティレナイオス――都会の片隅から見える風景
4 ミカエル・プセルロス――「哲学者の統領」の華麗なる宮廷遊泳術
5 行けば容易に戻れぬテサロニケ
一 テオドロス・スミュルナイオス――冥界のグルメ弁護人
二 テサロニケ府主教エウスタティオス――片意地な学者主教は愛されない
6 ニケタス・コニアテス――帝国衰亡の目撃証人
7 ニケフォロス・ブレミュデス――ニカイア帝国の知恵袋
8 テオドロス・メトキテス――哲人宰相の宿す闇
9 ゲオルギオス・ゲミストス・プレトン――千年帝国最後の奇才
別表 ゲミストス・プレトン『法律総論』目次
地図
3 十二世紀半ばのコムネノス朝期ビザンツ帝国/4 テサロニケ市街/5 第三回十字軍、フリードリヒ一世の行軍ルート/6 十三世紀のニカイア帝国周辺部/7 十四世紀半ばのパライオロゴス朝期ビザンツ帝国と周辺
あとがき
図版一覧
文献目録
註
地名索引
人名索引
内容説明
尋常ならざる知性の持ち主たちの奮闘記。世俗の支配層が武人とほぼ同義であった西欧中世社会とは異なり、ビザンツでは文才に長けた俗人エリートが隠然たる存在感を示していた。毀誉褒貶入り乱れた異才たちの波瀾の人生を活写する。
目次
1 先駆的な総主教たち
2 マケドニア朝ルネサンス期の首都の文人
3 「ビザンツの平和」の光と影
4 ミカエル・プセルロス―「哲学者の統領」の華麗なる宮廷遊泳術
5 行けば容易に戻れぬテサロニケ
6 ニケタス・コニアテス―帝国衰亡の目撃証人
7 ニケフォロス・ブレミュデス―ニカイア帝国の知恵袋
8 テオドロス・メトキテス―哲人宰相の宿す闇
9 ゲオルギオス・ゲミストス・プレトン―千年帝国最後の奇才
著者等紹介
根津由喜夫[ネヅユキオ]
1961年生まれ。金沢大学法文学部史学科卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。現在、金沢大学人間社会研究域人文学系教授。専門はビザンツ帝国史。とくに中後期の政治体制、政治文化、社会史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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