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エクス・リブリス
ティンカーズ

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  • サイズ B6判/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560090213
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

出版社内容情報

時計修理屋、行商人、牧師──三世代の男の不器用な人間模様を、痛切なまでに鮮やかに描き出したピュリツァー賞受賞作。

内容説明

退職後、時計修理を営んできた80歳のジョージ・ワシントン・クロスビーは、死の床で、自宅がばらばらに崩壊する白昼夢を見る。記憶や思い出の数々が脳裏に浮かんでは消えていくなか、鮮明に思い出したのは、11歳のとき、貧しい行商人だった父ハワードが、クリスマスイヴの夕食の準備のさなかに癲癇の発作におそわれた光景だった。ジョージは父が頭を床に打ちつけないようおさえつけていた指を強く噛まれ、それを見た妻キャスリーンは、夫を施設に入れることをひそかに決意する。その計画を知ったハワードは絶望し、いつものように行商に出たまま、二度と戻ることはなかった。病を苦にし、家を出た父の意識の流れ、牧師だった祖父のエピソードなど、現代を含むさまざまな時間軸の物語が、18世紀の時計修理手引書からの抜粋や手書きの文章とともに織り上げられていく。死にゆくジョージが最後に思い出した光景とは…驚異の新人による奇跡のデビュー作。2010年度ピュリツァー賞受賞作。

著者等紹介

ハーディング,ポール[ハーディング,ポール][Harding,Paul]
1967年生まれ。ロックバンドのドラマーとして活動した後、アイオワ大学の創作科課程を修了。ハーヴァード大学の創作科などで講師を務めるかたわら執筆した『ティンカーズ』が、ニューヨーク大学医学部付属の新興出版社ベルビュー・プレスより2009年に刊行されてデビュー。2010年度ピュリツァー賞フィクション部門を受賞し、一躍その名を知られるようになる。ボストン近郊在住

小竹由美子[コタケユミコ]
1954年東京生まれ。早稲田大学法学部卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

129
少年は父を畏怖し、逃れようとし、大きな手に救われる。誰もがいずれは迎える死を見据え、祖父から父へ息子へ孫へと引き渡されてく何かや、家長制度、芯の据わった母、年老いた家族の看取りなど、今の世界からは失われかけているものだからだろうか、読み手の琴線を震わせる。作者は、ドラマーをやめ、マリリン・ロビンソンの夏期創作コースに参加。埋もれそうだった処女作品は、NY大学医学部の非営利出版が癲癇が描かれていることで出版。ハワードと山の男の触れ合いが、そしてインディアン達が、郷愁をかきたてる。 ピューリッツァー賞受賞作。2019/09/18

巨峰

60
67年生まれのアメリカ人作家のデビュー作。4章構成の長編で、第1章は技巧凝らしすぎでよくわからなかったのですが、第2章第3章からぐぐっと引き込まれていきました。死の床にいる時計の修理人である老人ジョージ。その死の間際に魂が身体から時間から遊離し自由になる。癲癇の発作のあと行方をくらました父ハワードのことを。この小説の中核となるこの二人の物語はなかなか古典的でよかったと思います。2人の魂が再会する場面があって安心しました。まあ、でも、もう少しシンプルに物語を紡いでくれても良かったのではとも思うのですが~2016/10/28

たま

58
『ある一生』(ゼータ-ラー)の訳者あとがきで言及されていて読んだ。シンプルな『ある一生』とは違うタイプの作品だがとても良かった。時計職人ジョージとその父行商人ハワードの意識、誰が書いたか不明のテキスト、18世紀の時計修理テキストなどが併置され、私は苦手かな…と読み始めたが、隠者とハワードの交流に魅せられ一気に引き込まれた。北米の自然、厳しい生活、都市化、機械化、そこで生きた二人の老人の意識がぶつかりあい激しい火花を散らす不思議なすばらしい小説。小竹さんの訳業に脱帽である。2010年ピュリッツァー賞受賞。2023/06/19

つちのこ

31
ストーリーに集中できずに他ごとを考えてしまうと、更に迷いの深淵から抜け出せなくなる。戻っては同じ行を読み返し進める厄介な読書となった。著者の瞼に浮かぶ心象風景や謎めいた言葉のコラージュがつなぎ合わされていくが、これが終章になるにつれ全体像が見えてくると、時を刻んだ家族の歴史とキーワードである時計の動きが重なっていく。その抜群の構成力の見事さに驚く。死に瀕したジョージの朦朧とした意識のなかに浮かぶのは父の姿ばかりでない。人生の終焉を象徴するぐるぐると回る走馬灯。薄れゆく極彩色の夢の風景を連想してしまった。2024/01/21

りつこ

28
死の床についている80歳のジョージ、その父ハワード、そして牧師だった祖父。3代にわたる父子の物語を軸に、時計修理の手引書やハワードが書いた文章も織り交ぜられる。とても面白かったのだが、近づいては離れていくような、大きな風景を映し出したあとにミクロの世界に連れて行かれるような、不思議な感覚。特にハーワードの物語がぐっときて何度か涙がこぼれた。エンディングがとても良かった。2012/07/21

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