出版社内容情報
このままでは日本の伝統工芸は滅びる! 有田焼の人間国宝が死を目前に遺した、危機を乗り越えるための絞り出すような叫びと提言。
遺言 愛しき有田へ
伝統工芸の危機を乗り越えるために
本書は、伝統工芸の危機を乗り越えようと、有田焼の人間国宝が死を目前に遺した、絞り出すような叫びと提言にあふれている。
ここ数十年、有田の町から次第にロクロの音が聞こえなくなり、その代わりにオイルの臭いが漂い、機械の音が響いている。それは焼きものの伝統を継承していくということが、有田の町でも非常に困難になっていることを意味している。
まず焼きものの原材料を整える人がいなくなり、有田泉山の扱いにくい石が使われなくなった。また有田泉山の石を脱鉄するために一年も二年も時間をかけて土にする手間を惜しむようになった。
塩分を抜くために、薬を使うようになった。しかしそれは、焼きものに必要な不純物まで取り去ってしまうので、色絵の絵の具がピンと付かなくなる……。
著者は合理性と非合理性は車の両輪のようなもので、これらの微妙な感じが伝統工芸の質を左右する重要な鍵であると強調する。
「作家ではなく職人になれ」「美は手から生まれる」といった著者のことばは、焼きものの領域を超え、すべての伝統芸術にあてはまる名工の至言として読者の心に響いてくるだろう。
【著者紹介】
1934~2013年。2001年重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。著書に『余白の美 酒井田柿右衛門』(集英社新書)。
内容説明
このままでは、日本の伝統工芸は滅びる!名工の絞り出すような、最後の叫び。人間国宝中島宏、長男十五代による十四代への思いを併載。
目次
第1章 有田の現状と原材料
第2章 伝統を継承する走者
第3章 愛しい有田へ!
第4章 さらば、十四代柿右衛門 中島宏(陶芸作家・人間国宝)
第5章 父十四代目柿右衛門 十五代酒井田柿右衛門
うしろ書き 十四代の哀愁 和多田進
著者等紹介
酒井田柿右衛門[サカイダカキエモン]
1934(昭和9)年8月佐賀県有田町生まれ。1958年多摩美術大学日本画科卒業。1982年10月第十四代柿右衛門を襲名。日本工芸会理事、重要無形文化財保持団体(総合指定)代表に就任。1999(平成11)年九州産業大学大学院芸術研究科専任教授就任。(平成22年6月より名誉教授)2001年7月重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。2005年11月旭日中綬章受章。2013年6月没(七十八歳)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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