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出版社内容情報
東日本大震災とそれに続く原発事故を受けて書き下ろされた表題作をはじめ、ノーベル文学賞作家が放射する傑作戯曲集。
【著者紹介】
1946年生まれ。オーストリアの小説家、劇作家。2004年ノーベル文学賞受賞。
内容説明
ノーベル文学賞作家が、ポスト3.11の世界に捧げるレクイエム。東日本大震災とそれにつづく原発事故をうけて書き下ろされた表題作のほか、「レヒニッツ(皆殺しの天使)」「雲。家。」などを収録したワールドプレミア・エディション。
著者等紹介
イェリネク,エルフリーデ[イェリネク,エルフリーデ][Jelinek,Elfriede]
オーストリアの作家。1946年10月20日生まれ、ウィーン育ち。7歳で音楽教育を受けはじめ、13歳でウィーン市立音楽院に入学。オルガン、ピアノ、フルート、作曲を学ぶ。ウィーン大学で美術史と演劇学を専攻。若くしてトマス・ピンチョン『重力の虹』の翻訳に挑戦し、パウル・ツェランやハイデガーやアーレントを『トーテンアウベルク』という哲学的対話劇のなかによみがえらせるなど、ペーター・ハントケよりもポスト・モダンな作風かつ哲学、歴史、社会批判を音楽的実験言語で表現したことが評価されて、2004年にフランツ・カフカ賞とノーベル文学賞とをダブル受賞
林立騎[ハヤシタツキ]
1982年、新潟県栃尾市生まれ。ドイツ語翻訳者。演劇研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マリカ
28
安全、この時代の唯一の出口。安全の最優先。安全だけが長期的に役立つ。安全は絶対に続かねばならない、ついに確保されたなら。もう安全への逃避しか意味がない、子供たちを引き連れて。(「光のない。」より) ノーベル賞受賞劇作家イェリネクによる戯曲集。表題作では、東日本大震災と福島原発事故後の世界が描かれている。不安と混乱の中で「死者」の声に耳をすます。「加害者」とは誰か。「安全」とは何か。「光」とは…。震災から1年半が過ぎた。震災直後のあの混乱の中で感じた数々の疑問への答えを未だ見つけられずにいる。2012/11/12
hiroizm
25
東日本大震災と原発事故を基に書かれたそうだが、文中に具体的な固有名詞や明快なストーリーは無し、犠牲者、被災者、原発事故当事者様々な立場を想起しつつ著者の心に表出した悲しみ、怒り、困惑、諦観、疑問、不安、あらゆる感情思考のうねりを言語化したシュールな散文詩的戯曲。自分も震災から直接的被害無い傍観者寄り立場なので、作者のわだかまり、共感できるところ多々あった。当事者から見れば違うと言いたい点もあるだろうが、この作品のポイントはそのような異議疑問を引き出し考え語り合う機会を作るところにあるように思う。2023/04/15
ぱせり
8
イェリネクは、決して遠くから、あるいは一段高いところから無責任な言葉を放っているのではない。理解できてはいないのだけれど、この短い戯曲の中に散らばる混乱と暗さのなかで、一年半、何も終わらないまま、自分が孤立した小さな塊に過ぎないことをたまらなく感じてしまった。「多くの、多くの報道を読んだ。ソポクレース「アンティゴネー」も」 読むべきは、報道や関連本ではなくて、古典かもしれない。2012/10/21
イシザル
5
3月11日 を、ほんもんの芸術家が表現すれば こうも圧巻の鎮魂歌になるものなのか。美空ひばりの愛燦燦 同等に気持ちがこもってる。2017/10/05
MaRuTaTSu
3
3.11をもとに書かれた「光のない。」衝撃を受けた。はっきり言って全部は分からなかった、というより、果たして理解したのか自分?でも、一つ一つの叫び声はものすごくリアルだった。夏に訪れた陸前高田市で目の当たりにした光景がありありと思い浮かんだ。実際には見ていないものまで。 昨年12月の上演を見逃したのが残念でならない。2013/01/20