内容説明
小説か、実録か?まだあどけない女子高生が、老齢の監督に導かれるままに足を踏み入れた、眩いばかりの未知の世界。フランス映画界の伝説的女優が描く、傑作「バルタザールどこへ行く」の舞台裏。
著者等紹介
ヴィアゼムスキー,アンヌ[ヴィアゼムスキー,アンヌ][Wiazemsky,Anne]
1947年生まれ。亡命ロシア貴族で外交官の父と、ノーベル賞作家フランソワ・モーリヤックの娘である母の間に生まれる。伯父も作家クロード・モーリヤックという文学一家に育ち、18歳でロベール・ブレッソンの映画「バルタザールどこへ行く」(1966)で女優デビュー。翌年「中国女」(1967)に主演し、その監督であるゴダールと結婚する(のちに離婚)。80年代まで、他にパゾリーニ、フィリップ・ガレル、アンドレ・テシネなどの作品に出演するが、その後小説家に転向
國分俊宏[コクブトシヒロ]
1967年生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒。パリ第三大学文学博士。青山学院大学国際政治経済学部准教授。専門はフランス現代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かふ
13
18歳になったばかりのアンヌが映画監督のブレッソンに見初められてヒロインとして『バルタザールどこへ行く』に出演する映画ドキュメンタリーのような乙女文学。アンヌのお祖父さんはノーベル文学賞作家のフランソワ・モーリアックでフランソワお祖父いちゃんはアンヌに日記は毎日書くように。映画での体験は貴重だから。なんか事が起きたらピカソの奥さんのように後で本を出版して復讐できるからと冗談を言う。このとき18歳になったばかりのアンヌは処女だった。しかし処女を失ったのは別の俳優だ。ブレッソンの見出す少女の幻影とは乖離する。2017/11/04
garth
4
「私、なぞなぞは知らないけど、答えのわからない謎ならひとつ知っているわ」少女アンヌにとって巨大なる謎としてあらわれる「ロベール」。その内面は決して描かれない。まるでブレッソンの映画のように。2010/10/25
nranjen
2
この本を読むまで作者も映画も知らなかった。かつての『少女』の初体験が生々しく語られる(裏切られたのに似た悲しみ、母親との相克)と同時に、その心の動きがブレッソンをはじめとする周りから全く気づかれていなかったであろうことも描かれている。何より万華鏡のように移ろい変わる少女に魅了され、少年のように驚き、経験をつんだ大人として深い愛情溢れる目で見つめるブレッソンに寄り添うように描かれている。このような様々な視線で『あの時』を見つめることができるのは、経験をつんだ作者だからこそ可能になっているのだと思った。2017/06/13
めめ
2
十七才の少女が、六十三才の映画監督と出会い、一緒に生活しながら映画を撮る物語。大人にまじって、女優という仕事を始める新しい生活。戸惑いや期待、不安や喜びが描かれる。眩しくて瑞々しい、そして時々、痛々しい少女の時間。灰色がかった青色、みたいな小説だった。2013/06/18
𓆙
1
文体が軽く、分かりやすくさくっと読めた。「バルタザールどこへ行く」のアンヌ視点の製作秘話や気持ちの変化などを小説という形で読むことができた。アンヌ視点のロベールブレッソンの人物像も。少女という題名にある通り当時のアンヌは少女だったように思う。とても少女然として瑞々しかった。庭園の美しい情景を感じながらとても良い物語でした。2021/03/31