内容説明
気鋭の哲学者が仔オオカミと出会い、共に生活しその死を看取るまでの驚異の報告。野生に触発されて著者は思考を深め、人間についての見方を一変させる思想を結実させる。
目次
1 クリアリング
2 兄弟オオカミ
3 文明化されないオオカミ
4 美女と野獣
5 詐欺師
6 幸福とウサギを求めて
7 地獄の季節
8 時間の矢
9 オオカミの宗教
著者等紹介
ローランズ,マーク[ローランズ,マーク][Rowlands,Mark]
哲学者。1962年、ウェールズに生まれる。イギリスのマンチェスター大学で最初は工学を学んだが、後に哲学に転向。オックスフォード大学で哲学の博士号を取得。アメリカのアラバマ大学、アイルランドのコルク大学などを経て、2007年から現在まで、アメリカのマイアミ大学で哲学教授を務める
今泉みね子[イマイズミミネコ]
国際基督教大学教養学部自然科学科卒業、生物学専攻。フリージャーナリスト・翻訳家。1990年よりドイツのフライブルク市に住み、ドイツ語・英語書籍の翻訳、ドイツ語圏の環境対策に関する執筆・講演に従事している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キジネコ
34
私の狼好きを自覚した本です。オオカミと猿である人間が作る「群れ」「家族」の物語、事実の記録。内容に惹かれて読み始めました。が、翻訳のリズムに馴染めず、100ページまで読んで駄目なら諦めようと思いました。70ページ過ぎたあたりで漸く。最後は素直に、哲学者の視線に感心し、家族の死を受け入れるマークさんに感情移入、腕の中でブレニンを看取る瞬間に至る経過は自身 過去の体験とオーバーラップしてとても複雑…一冊の本が感情を激しく刺激する。「良い本ですよ」と紹介できます。この本を読んで もう8年が過ぎました。2012/05/06
ワッピー
14
オオカミと暮らした日々。ところどころ出てくるエピソードはおもしろいけれど、やはり本業が哲学者だけあってオオカミ:ブレナンに触発された哲学思想が本命。オオカミを疲れさせるほど一緒にジョギングし、片手アームカール54キロ(ブレナンの体重ですね)、ベンチプレスで143キロあげられる著者だから、何とかアルファの地位を脅かされずにいられたのだろうけど、オオカミと暮らすのは一般人にはハードルが高すぎ。2010/09/05
kuchen
9
『乙女の読書道』で紹介されていた本。哲学者がオオカミと生活した記録。所有物でもペットでもなく兄弟と語り、一緒に生活する中で哲学的思考を深めていく。掲載されているオオカミと著者の写真に驚く。とにかく大きい。適切な訓練をし、著者も負けないように鍛える。ブレニンのやんちゃなエピソードが楽しい。哲学の話で印象的なのは人間とオオカミの差違を、過去と未来を含んだ現在との時間軸と、瞬間との観点から考察している点。視座の違いで幸福や死の捉え方が変わってくる。著者の現状にも驚くが、ブレニンとの愛情物語だったように思う。2021/06/06
アセロラ
8
オオカミとの暮らしと哲学を関連づけながら話しています。途中から犬2匹も加わっています。オオカミの描写はすごくおもしろいです。けっこう笑いました。それに絡めた哲学は難しいところもあります。ですが、幸せとは、それによって得られるものではなく、それ自身として価値があるもの。私たちに未来があるのは、欲望、目標、計画が私たちを未来へと方向づけているから。このような、なるほど、と理解できた部分もありました。2019/08/05
Kazyury
8
冒頭の、オオカミという光源が私を照らしてできた影を見る、という記述が、何やら持って回った書きぶりだなと思ってたが、読後には適切な記述だった事が分かった。 仔オオカミと共に暮らし始めた日々も心が和むエピソードだが、著者がオオカミとの関係を主従でも同化でもなく、異種の1個体との対峙と捉えているのが良くわかる。 そのような関係性でのみ、ブレニンが著者を照らしてできた影がサルであることが明らかになるのだろう。 自分は「内なるサル」に気付いていなかったので、指摘には衝撃を受けた。周囲のサルを見る目が変わりそうだ。2018/01/24