出版社内容情報
ミラノの大聖堂に近いコルシア・デイ・セルヴィ書店に集う、心やさしくも真摯な生き方にこだわる人々とのふれあいをつづる魂のエッセイ。【本文より】若い日に思い描いたコルシア・デイ・セルヴィ書店を徐々に失うことによって、私たちはすこしずつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせたような荒野でないことを知ったように思う。
内容説明
ミラノの大聖堂の近く、サン・カルロ教会の軒先を借りるようにして作られた一軒の小さな本屋があった。その名はコルシア・デイ・セルヴィ書店、貧しくも生きることに真摯な人々が集う心やすまる出会いの場所だった。
目次
入口のそばの椅子
銀の夜
街
夜の会話
大通りの夢芝居
家族
小さい妹
女ともだち
オリーヴ林のなかの家
不運
ふつうの主に
ダヴィデに―あとがきにかえて
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
57
【星の かわりに 夜ごと、ことばに灯がともる。人生ほど、生きる疲れを癒してくれるものは、ない(ウンベルト・サバ/須賀敦子訳)】元本は、著者がミラノを去って20年余を経た63歳の時の1992年に発刊。本書は2001年刊。ミラノの大聖堂に近いコルシア書店に集う、理想を求め真摯な生き方に拘り続けた心優しき人々との交流などを綴ったエッセイ。「あとがきにかえて」で、<コルシア・デイ・セルヴィ書店をめぐって、私たちは、ともするとそれを自分たちが求めている世界そのものであるかのように、あれこれと理想を思い描いた>と。⇒2025/08/09
るんるん
33
美しい文章なので言葉ひとつひとつを味わいたくなる読書でした。コルシア書店の情熱のかなめのダヴィデ、テレーサの存在感、思索のかたまりカミッロの恋、家族の悩みをもつガッディのことなどのコルシア書店の人々の物語が上質なかなしみをもっている。こころやすまる共同体は徐々に失われていくのだが、それは家族の喪失に通じるところもあるなと思ったり、孤独の確立で結ばれる言葉には哀愁の灯りがともっているようにも感じられました。2014/10/22
まおまお
5
初の須賀さんの作品なので、まだまだわかっていないことが多いのだろう、と思いつつ読み終えた。とても知的で地に足がついた言葉を使う、という印象をもった。本当の優しさを知っている方なのだろうな。2016/04/08
繻子
4
文章がとても美しい。どう言い表せば、おおげさでなく、たくさんの人の、人それぞれの深いところや、内面でなく行動から、人間と思い出を整った文章で描けるのか、磨いた文章だと読む度思います。カミッロも、ダヴィデも、ルチアも、ご夫人方も、勿論ピーノも、好きにならずにはいられない。かつての共同体が、ただの重荷になってしまったルチアの話、その話の中で語られるカミッロのエピソードが、どうしても好きです。2014/09/30
小倉あずき
3
須賀敦子が、文筆家として我々の前に現れるために彼らとの出会いと別れはどうしても必要だったのだろう。「人間だれもが、究極において生きなければならない孤独と隣りあわせで、人それぞれ自分自身の孤独を確立しないかぎり、人生は始まらないということを、すくなくとも私は、ながいこと理解できないでいた」彼女が孤独を受け入れて歩み出してくれたおかげで我々はこの豊穣な世界を堪能することができている。本屋もまた有機物なんだな。2025/11/01




