出版社内容情報
売春宿の女、帽子作り、貞淑な聖女――重層する語りの中に浮かびあがる女の複数の生を追う表題作ほか全3編。
【著者紹介】
1885~1962年。デンマークの作家。著書に『アフリカの日々』『冬物語』『復讐には天使の優しさを』『最後の物語』『運命綺譚』など。
内容説明
冒険を求めて出奔、海賊になったと噂される弟が三十年ぶりに帰ってきた。その報せを聞いた二人の姉は故郷の家へ向かうが…「エルシノーアの一夜」。重層する語りの中に浮かび上がる女の謎を追う「夢みる人びと」他、全3篇。夢想と冒険、人生の神秘を描く不滅の物語集下巻。
著者等紹介
ディネセン,イサク[ディネセン,イサク] [Dinesen,Isak]
1885年、デンマークのルングステッドの地主ディネセン家の次女カレンとして生まれる。コペンハーゲンの王立美術学校で絵を学びパリ、ローマに遊学。1914年、ブロル・ブリクセン男爵と結婚、英領東アフリカ(現ケニア)でコーヒー農園を経営するが、結婚生活はまもなく破綻し、夫と離婚。農園経営も行き詰まり、1931年にデンマークに帰国。文筆活動に入り、イサク・ディネセン名義で発表した『七つのゴシック物語』(1934)で一躍注目を集めた
横山貞子[ヨコヤマサダコ]
1931年生まれ。慶應義塾大学大学院英文科修了。英文学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
42
「七つのゴシック物語1」が期待に反して楽しめなかったので(車中での待機中に読んだのがまずかったか)、「売春宿の女、帽子作り、貞淑な聖女──重層する語りの中に浮かびあがる女の複数の生を追う表題作ほか全3編。夢想と冒険、人生の神秘を描く最高の物語作家による不滅の物語集第2巻」という本書は、今度は自宅でじっくり。2024/09/07
かわうそ
22
物語のキモとなる因果関係が明かされるタイミングとそこに至るまでの展開が絶妙で派手な出来事は起こらなくとも下手なミステリーよりも意外性に富んでいる。巧みなプロットというのはこういうことを言うんだなと納得。2014/03/22
hasegawa noboru
15
ゴッシク物語残り三篇。「エルシノーアの一夜」老貴婦人姉妹と海賊暮らしのなか異国の地で絞首刑に処せられたその弟の物語。<弟の見つめていたもの>は<あざむかれ、裏切られたあらゆる人びと、語るすべを知らぬ弱い者たちの苦しみ、この世のあらゆる不正と絶望に、彼は眼をそそいでいたのだ。>「夢みる人びと」三人の男がそれぞれのファム・ファタール運命の女を追い駆けるのだが、実はその女、一人の女であったという謎。追跡されて雪深い山中の崖から、女飛ぶ。「詩人」老人に愛される若き詩人アンデルス、その恋人フランシーネ、その結婚予定2021/11/06
aoneko
15
進んだ先に驚異的な何かがあるわけではないけれど、展開が読めなくて気になってページを捲る。著者の冷徹な視線の先にある、かぐわしさ鮮やかさ。でもきらめきだけじゃない、静かな魅力。前作とは打って変わって、今作は暗くて寒い、北欧の夜気を感じた。老姉妹と海賊になっちゃった弟の話なんて入り口から惹かれるのだけど、表題作はとりわけ好みでした。2014/01/28
rinakko
11
なんと鮮やかな…と。3篇どれをとっても、読み終えたら溜め息ばかりになる。まずは話が面白くてぐいぐいひき込まれた先に、必ず唸らされる展開が待ち受けていた。何か仕掛けがあって騙されるとか、そういうことではないのに、どこか一筋縄ではいかないのが堪らない。読んでいて揺らぐ瞬間の、驚きと快感。そして登場人物一人一人の造形がとても興味深く、なぜそうなるのか…という点においても説得力があり、それは作品全体の素晴らしい奥行きになっている。大変に満足な一冊だった。「バベットの晩餐会」以来だったので、他作品にも手を伸ばしたい2013/11/16