出版社内容情報
マリー・アントワネットの朗読係の目を通して描く、ヴェルサイユ運命の三日間。フェミナ賞受賞小説。【映画化】
内容説明
1789年7月14日、フランス革命勃発。優雅で豪奢な夢の世界は、一瞬にして脆くも崩れ始める―王妃マリー・アントワネットの朗読係の目を通して描く、ヴェルサイユ運命の三日間。フェミナ賞受賞小説。
著者等紹介
トマ,シャンタル[トマ,シャンタル][Thomas,Chantal]
フランス、リヨン生まれ。サド侯爵やカサノヴァなどの18世紀文学の専門家、エッセイスト。CNRS(フランス国立科学研究センター)研究員。初めての小説である『王妃に別れをつげて』は、2002年のフェミナ賞を受賞、ベストセラーとなる
飛幡祐規[タカハタユウキ]
1956年東京都生まれ。74年渡仏。パリ第5大学にて文化人類学、パリ3大学にてタイ語・東南アジア文明を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
43
バスティーユ監獄が陥落した時、宮殿にいた貴族達は情報の少なさ故に「いつもどおり」の生活を過ごしながらも膨れそうな不安を押し殺していた。そんな中、マリー・アントワネットに最後まで仕えた朗読係は過去を回想する。朗読者のポリニャック婦人にも嫉妬するまでの王妃への思慕は余りにも純真だからこそ、喪失の嘆きの深さが胸に迫る。すぐに家族と逃亡しなければならなかった貴族達を尻目に教師や召使いたちが主人の持ち物を盗んでいた事は『クロコダイル路地』でも描かれた階級の逆転によって浮かび上がった人間の浅ましさを連想し、苦々しい2017/05/12
kaoru
38
バスチーユ陥落から3日間のヴェルサイユ宮殿の様子を王妃の朗読係が綴る設定の本書。失われるアンシャン・レジームの優雅でいくぶん退廃的な描写。その象徴とも言える王妃の生活様式の繊細華麗さ。以前からルイ16世夫妻は間違った時代に間違った場所にいた気の毒な人達だと思っていたが、時代の大波に飲まれる直前の彼らや取り巻きの様子が細密画のように描かれる。贅沢だが美しく気丈な王妃が親友ポリニャック夫人にも去られて次第に孤独になっていくさまが悲しい。ラスト近く、主人公はヴェルサイユを「トランプで組み立てたお城」と呼ぶ。2020/09/29
noémi
13
マリー・アントワネットの朗読係であるアガートから見たヴェルサイユ崩壊の三日間。語り口はあくまで典雅で、次のナポレオンの帝政時代のようなこけ脅かしのドラマティックさはない。ラモーのクラブサンのように、ワトーの絵画の中の恋人の密やかなおしゃべりのように。全体的に静かでトーンも淡い。改めてロココの時代の偉大さを知った気分。この時代いかに「会話」というものが重要視されていたかがわかろうというもの。1789年7月14日に起こった革命。王妃は最大の友、ガブエル・ド・ポリニャックを救うため、ある決心をしたが・・・。2012/11/17
エドワード
9
正月に観た映画の原作。1789年7月14日。フランス革命勃発の日。パリのバスティーユ牢獄を革命軍が占拠した。同日ベルサイユでは王族、貴族達が優雅な生活を楽しんでいた。語り手はアガート・シドニー・ラボルド。王妃マリー・アントワネットの朗読係補佐。彼女の目で革命三日間の宮殿を描く。翌日、パリの事件が不明瞭な形で宮殿へ伝えられ、大混乱が始まる。正体不明の恐怖。貴族達は恐慌をきたし、我先にと宮殿から逃げ出す。王家を残して。ブルボン王朝の黄昏。それでも彼女の目に映るロココ趣味に満ちた繊細優美な宮殿の生活が印象的だ。2013/01/21
jamko
8
最近BSで再放送してるベルばらに夢中だ。というわけで何かフランス革命ものを、と選んだ一冊。マリー・アントワネット専属の朗読係であった夫人による回想録という形で描かれるヴェルサイユ宮殿落日の三日間。沈みかけた船からはいち早く鼠が逃げ出す、という例え話を思い出さずにはいられない。不安は膨れ上がり、人は逃げ出し、権威は地に落ちる様子はスリリング。生まれて初めて、開けようとした扉が開かないという経験をしたアントワネット妃を包む暗闇を描いた部分は、本当に目に浮かぶようで強く印象に残った。2015/07/06