内容説明
銀行員ヨーゼフ・Kは、ある日、突然逮捕される。彼には何ひとつ悪いことをした覚えはない。いかなる理由による逮捕なのか。その理由をつきとめようとするが、確かなことは何ひとつ明らかにならない。不条理にみちた現代社会に生きる孤独と不安をいちはやく描いた作品。
著者等紹介
カフカ,フランツ[カフカ,フランツ][Kafka,Franz]
1883‐1924。チェコのプラハに生まれる(当時はオーストリア=ハンガリー帝国領)。両親ともドイツ系ユダヤ人。プラハ大学で法学を専攻。在学中に小説の習作を始める。卒業後は労働者傷害保険協会に勤めながら執筆にはげむ。若くして結核にかかり、41歳で死去。ジョイス、プルーストとならび現代世界文学の最も重要な作家となっている
池内紀[イケウチオサム]
1940年、兵庫県姫路市生まれ。ドイツ文学者、エッセイスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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里愛乍
51
『変身』がある日突然虫になるのであれば、こちらはある日突然逮捕される話。だが、こちら読み手の思うような展開が望めない点では『城』に近いかもしれない。ひとつの物語とは大抵事の発端が起こった原因があるもの(だと考えているが)本作にそれは見えない。もやもやした読後感しか残らないがそういう感情を引き起こす小説として再読すれば、またこちらの受け取り方も変わってくるかもしれない。2017/07/20
syota
33
自分が何の罪を犯したのかも、裁判の手続きも、裁判所の機構自体も分からず、すべてが闇の中。登場人物たちの行動も、どこか現実離れしている。そんな中で、過信ゆえか自ら墓穴を掘ってしまうK。お役所の秘密主義や腐敗、硬直化、機構の肥大化、その中で押しつぶされてしまう個人、という図式を、現実世界から皮一枚へだてたアナザーワールドを舞台にデフォルメして描いた、と解釈することは可能だろうが、そんなにすっきり割りきっていいのだろうか。正直、よくわからない。要再読。なお、訳文は平明で非常に読みやすかった。[G1000]2016/05/09
yumiha
24
「不条理」という言葉が何度も浮かんだ。なぜ逮捕されたのか?誰に何ゆえに訴えられた訴訟なのか?冤罪なのか?裁判はどう進むのか?何も見えてこない。そして、何もかも曖昧模糊な経過で処刑!?謎だらけで不安だけをやけにかきたてる。納得できんよぉ~。こんな死に方はイヤだぁ!大聖堂で「いつわりが世の秩序になり上がった」と言うヨーゼフ・Kの言葉が全てなのか?解説によると、カフカの死後、残された手稿を友人が整理して出版したものらしい。この友人の力不足と決めつけておこう。2017/09/06
ぞしま
23
機能不全に陥った法機関に翻弄されるエリート銀行員の30-31歳の綺譚劇。悲劇だが悲劇的と感じない読み心地は何故だろうかと考えてみるに、圧倒的なほど心理描写が欠けた筆致と、絶望的なほど思考停止が蔓延している世界の有りようのためだと思う…。機能のみ肥大化した世界に対して、尊大なKは立ち向かうが、徐々に少しずつ絡め取られていく…その転落の様は不気味で不可解で不可避性を帯びている。読み進むにつれ、いつの間にか私も思考停止に陥って、この小説世界はこうだと受け入れ始めており…いかん!となった…。すごい小説だ2016/08/14
こうすけ
22
『変身』以来のカフカ。訳者のカフカ論がとても面白かったので挑戦(https://youtu.be/VC5R9JkemAA) 内容どうこうというより、これを仕事終わりに夜な夜な大学ノートに書き留めていったカフカがすごい。未完とされているけど、十分まとまって終わっている気がする。やたらエロい女性キャラクターたちがたくさん出てくるのが不思議。「大聖堂」の章の飛び抜けた面白さが印象に残る。2022/03/12