出版社内容情報
エロスと死、残酷と幻想、毒の禁忌、悪魔と愛――三島や谷崎への接近はマンディアルグの世界にさらに豊穣な実りをもたらした。本書は、晩年の傑作七篇をおさめた最後の短篇集である。【編集者よりひとこと】マンディアルグの日本に対する並々ならぬ関心は有名であるが、その両者は「薔薇というさまざまなイメージの集合体――象徴を通じて、奥深いところでつながっている」(「訳者あとがき」)。薔薇に関するエッセーのなかでも三島由紀夫に言及しているという。
内容説明
エロスと死、残酷と幻想、悪魔と愛―三島や谷崎への接近はマンディアルグの世界にさらに豊穣な実りをもたらした。神秘的な女主人公の死の儀式を執り行なう四人の日本人女性に捕らえられた男の体験を描く表題作ほか、晩年の傑作七篇を収めた最後の短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koning
29
訳者解説にある通りあえて狙ったらしい斜め上の日本のイメージをはじめとして確かにイメージを幾重にも重ねてというところでどちらかというとお酒飲みながら夜中に読むべきだったかな?という気がしなくもない。谷崎の記憶に捧げるとか書いてるしね。O嬢の物語のようなれっきとした官能小説ではないもののフランスらしーエロチシズムというかそんなもんが漂っててよろしいんじゃないかと。影の反乱は色々とこっちが勝手に連想してしまって困った。短編集だけれど楽しい時間を過ごせたので御の字ってとこでございます。2014/11/19
藤月はな(灯れ松明の火)
27
ジャポニズムという名のオリエンタリズムに彩られた部屋に監禁された男が見た光景を描いた表題作はカリスマ的存在を放つナカ・ハンが病に痩せ衰えた身体の局部などを口紅などで紅く、装飾された姿を想像して痛々しいはずなのに魅惑的な神々しさもある姿に思わず、息を呑みました。男の自分勝手なサディズムを超越する女体の神秘性と死に際することでより、一層、引き立った一種の美しさを描いた「ムーヴィング・ウォーク」と近親相姦と喪失の絶望を謳う「蝮のマドリーヌ」がお気に入りです。2013/04/30
HANA
27
全編からエロスと死の匂いが濃厚に漂ってくる一冊。著者最後の短篇集という事で、初期の諸作と比べると作風が変わったのが明らかに見て取れる。その意味で一番幻想的なのは「ムーヴィング・ウォーク」かな。こないだ別の題で読んだとこだけど。四人の日本人に誘拐され奇怪な観劇を要求される表題作も気に入ったけど、「蝮のマドリーヌ」には度肝を抜かれた。わずか10頁のうちにエロスとタナトスがみっしりと詰め込まれている。訳者後書きで著者のエッセイと三島の関係に触れられていたけど、エッセイも是非訳して欲しいものである。2012/11/17
壱萬参仟縁
15
1983年初出。 「ムーヴィング・ウォーク」で、 美しいが不潔な女が、エレキギターを 同類の2人の少女だけを観客として弾きながら歌っている。 ブルースのベッシー・スミスが歌っていた『ドウ・ユア・デューティ』 で、「汝の義務を果たせ」というシカゴ訛りのハスキーヴォイス(92-93頁)。 現代日本でも汚ギャルのような感じか? あるいは、仕事のない若者は既視感か。 2014/04/06
rinakko
8
頽廃と背徳にまみれる贅沢か。やはり表題作「薔薇の葬儀」がよかった。主人公レオン・リュカンは歓楽場のバーから出て歩いているところを、突然2人の日本女に腕を捕られ、そのまま車に乗せられる。美しい女たちからやんわりと虜囚にされた彼は、ひどく風変わりな館へと大人しく拉致される(曰く“驚かしてもらいたいからね”)。そして元遊女である4人の日本女たちから、自分たちの女主人ナカ・ハンの為に彼女の葬儀に立ち合うことを求められる…。かなりあからさまにエロスと死なのだが、葬儀の内容といい〈双正方形館〉といい度肝を抜かれた。2011/08/24