出版社内容情報
財界の大物のスキャンダルをつかんだジャーナリストの前に暗殺者が現われ、ある条件と引換えに妻と娘の写真を要求する。独特の静謐なスタイルでつづられる巧緻極まりない小説世界。【編集者よりひとこと】フランスの推理小説年鑑で「小さな宝石」と評された逸品。訳者の堀江敏幸氏曰く「破綻していく理論の、夢のような甘さと苦さ。それがミシェル・リオの特徴のひとつだとするなら、『踏みはずし』は(・・・)彼の精髄を最もよく伝える作品だと言えるだろう」(「訳者ノート」より)
内容説明
財界の大物のスキャンダルをつかんだジャーナリストの前に、暗殺者が現われた。だが、歴史書を愛読し、哲学的なセリフを口にする殺し屋は、ある条件と引換えに、ジャーナリストの妻と娘の写真を要求する。独特の静謐なスタイルでつづられる小説世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
197
ミシェル・リオは初読。しかもこれまで全く知らなかった作家。訳者の堀江敏幸のラインから辿り着いたが、そうでなければ、おそらくは知らないままだっただろう。本書は本国のフランスではミステリーに分類されているようだ。たしかにそうなのだが、ミステリー・ファンには不満が残るかもしれない。なぜなら、謎が謎のままで残るからだ。読後の印象は、カミュの『異邦人』に似ているか。ただし、『異邦人』のムルソーが徹頭徹尾クールな無関心を貫くのに対して、本書の主人公の男(名前はない)の内面には、不合理な愛の渇望が秘められているのだが。2015/01/24
(C17H26O4)
89
冷徹無比で一分の隙もない完璧な殺し屋。のはずだった。そんな男が踏みはずす。身の破滅を想像しなかったのか。殺した相手の妻と娘に惹かれたのが運の尽きだったのか。少女の無垢さに触れ情が生まれたのか。胸の奥にあった平穏な生き方への憧れに気づいてしまったのか。引き返すこともできたはずだ。そうしなかったのは男自身が望んでいたからに思えてならない。「踏みはずし」た原因は一見、奈落へ落ちる最後の出来事だけのように見えるが、そうではない。そこへつながる起点があり、道筋がある。孤独な殺し屋の哀しみと美学を見た気がした。2019/10/18
新地学@児童書病発動中
81
哲学的な犯罪小説といった趣きの小説。殺し屋が主人公でたくさんの人が殺されるのだが、静かな雰囲気が漂っている。殺し屋が自分が殺したジャーナリストの妻の子供に見せる優しさが、殺伐とした物語全体と鋭いコントラストを作り出しているところが面白い。感傷を排して、客観描写に徹するところはヘミングウェイやハメットに似ているが、翻訳ではその文章の良さが完全に伝わっていない気がした。2014/01/05
藤月はな(灯れ松明の火)
70
マッカーシー作品や初期の森博嗣作品『ドライヴ』、『サムライ』、『レオン』に代表される、フィルムノワールのような雰囲気に包まれた静かで静かな熱量が篭った作品。柵を持たずにシンプルに過ごすからこそ、一流だった殺し屋。そんな彼が踏みはずしたのは、当たり前のような感情と日常だった皮肉。会話文だけで進むブレモンへの尋問やマリーとの情事前が最高に痺れます。2017/11/06
燃えつきた棒
33
最初の一歩から人生を踏みはずしてしまった僕のような人間には、なんともそそられるキラータイトルだ。 アクション映画にでも出てきそうな、めっぽう強くてかっこいい殺し屋が人間離れした活躍を見せる話。 薄くて読みやすいが、特に心に残るというわけではないとやり過ごそうとしたところ、次の一節に出会った。/ 【「ひとりの男が山道を歩いているとする。男はつまずき、断崖から墜落する。この事故が起きるために結びついた決定要因は、相当な数にのぼるにちがいない。にもかかわらず、墜落の原因がなにかと問われれば、→2023/09/08
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