出版社内容情報
罠とも知らず愛する女を救いに馬を駆る若き騎士。途中、刑場の丘のかたわらを通りすぎるが、その時、縛り首の死体が彼に話しかける。「俺を連れていけ、何かの訳に立つはずだ」
内容説明
罠とも知らず愛する女のもとへ馬を駆る若き騎士ドン・ルイ。途中、刑場の丘のかたわらを通りすぎるが、その時、縛り首の死体が彼に話しかける。「俺を連れていけ、何かの役に立つはずだ」。ユーモアと辛辣な皮肉を交えた魔術的リアリズムの世界。傑作『大官(マンダリン)を殺せ』を併せて収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nobi
76
最初の「大官を殺せ」はなんという絢爛たる妄想。当時の文学世界を垣間見ながら、リスボンでのトリマルキオばりの豪奢で放縦な倦怠感のついて回る生活から、天津、北京、通州…のエキゾチックな風景まで、その映像が眼前に繰り広げられる。この作家の名前を知らず、文末に「アンジェにて一八八〇年六月」とあるのを見ても気鋭の現代作家と思い込んでいた。擬古文風の文体と強靭なイマジネーションによる生き生きとした写実的描写は、今の家に籠もる生活を色彩豊かにしてくれる。怪しげなタイトルの表題作「縛り首の丘」も奇想の展開に引き込まれた。2020/04/29
白のヒメ
51
まるで芥川龍之介やブッツァーティを思わせる寓話が二つ。『大官を殺せ』誰かを殺せば自分に幸運がやってくるという、ポルトガルをはじめ、ヨーロッパなどに伝わる古い言葉を物語にしたものだそうだけれど、最近のハリウッドでも(見てないけれど)こういう映画あったっけ。でも、結局自分の良心に背いて良いことなどあるわけもなく。『縛り首の丘』人間の業の一つ「嫉妬」も、結局自分の良心の前では花を握って息絶えるしかないほどの恥ずかしい衝動だったり。あっぱれ。久しぶりに達者な感を覚える小説でした。(☚私何様、読者様)2015/09/12
まさむ♪ね
49
須賀敦子『塩一トンの読書』に収められていた書評の中で一番読みたくなった本。幸福とは求めるものではなく、その人の行いに対してまず抽選券が与えられ、そして気づかないうちに当選してたりするものだと思う。その幸福を他人を陥れ奪ったりすると、得た幸福以上の苦しみを味わうことになるのだろう。縛り首の丘、月明かりに照らされて吊るされた死体が静かに揺れ動く場景は、最も不気味で恐ろしいはずなのに最も美しいと感じてしまった。素晴らしきかなマジックリアリズムの世界。2015/01/19
みねたか@
32
「縛り首の丘」。ゴシックホラーというのでしょうか。若きジョニー・デップが主演した「スリーピーホロウ」という映画を思い出しました。邪心を知らぬ美貌の妻,独占欲と猜疑心の虜となった夫,一度はあきらめたかなわぬ恋の成就に猛進する男。あえて単純化された人物像がまた大人のおとぎ話という趣を増してくれます。もう一編の「大官を殺せ」。悪魔の囁きに唆されて鳴らした呼び鈴。それが世界を、人生を変えてしまうなんて。アラビアンナイトを思わせる壮大で悲しいお話。どちらも楽しめました。2020/10/13
長谷川透
25
両短篇とも、恐怖とグロテクスをバックに物語が進んでいくが、ユーモアとシニカルが利いているので、読み進めることに躊躇することもないし、思わず本を閉じるということもないだろう。ただ、読んでいるときに、面白いのだけれど、既視感を覚えるのはどうしてだろう? 考えてしまった。この既視感は『グリム童話』から来るものだと思われる。もちろん、完コピということではなく、いくつかの物語エッサ・デ・ケイロースの手によって組み合わされ、見事に調和している。馴染みのない作家であったが19世紀ポルトガルの文豪と言われるのも納得だ。2012/07/26
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