出版社内容情報
セーヌ川の橋の下に住まうボヘミアン・アンドレアスは、ある日思いがけなく200フランの金を恵まれる。その日から美しくも不思議な奇跡の日々が彼の人生の最後を飾ることになる。異常なまでに書けるといわれ、そして人一倍酒を愛したロートの作品を池内紀訳で贈る。表題作の他に2篇収録。
内容説明
セーヌ河の橋の下に住まうボヘミアン、アンドレアスは、ある日思いがけなく立派な紳士から二百フランの金を恵まれる。その幸運を契機に、美しくも不思議な奇跡の日々が彼の人生の最後を飾ることになった。こよなく酒を愛した作家ヨーゼフ・ロートのこの絶妙の中編はエルマンノ・オルミ監督による映画化で大きな感動を呼んだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
84
放浪のユダヤ人作家といわれたヨーゼフ・ロートの三篇。表題作は、ルトガー・ハウアー主演で映画化されている。映画はずいぶん前に観ているが、記憶はすっかり薄れている。セーヌ川の川岸で暮らす宿なしで飲み助のアンドレアスのもとに、「200フランを受け取ってもらえないだろうか」と立派な身なりの紳士が訪れる。これを機に幸運が舞い込んだかのような小さな奇跡が次から次と起こる。彼にとっての至福の時は、酩酊できる酒のある日々だった。2014/01/23
ポテンヒット
12
表題作はセーヌ川の橋の下で暮らす主人公に訪れるちょっとした幸運の物語でお伽話のような展開だと思ったが、訳者あとがきを読むとこれは著者の話なんだと分かり、切なくなった。「皇帝の胸像」は、戦争を経て時代が変わり今までyesだったものがnoになる。その波に乗れない(乗らない)心情がまた切ない。同時に、国家とは、民族とは何かを考えさせられる話でもあった。2023/03/02
kaze
12
いい話だった。表題作も良かったけれど、3編目の「皇帝の胸像」がしみじみと感動的だった。モルスティン伯をバカにする新しい世界の支配者たちは、大切なものを見落としている。世界大戦によって変わったのは世界の切り取り方だけで、民衆は何も変わらないのだ。新しい支配階級はかつて皇帝がもっていたような敬意の対象足りうる「尊さ」のようなものを備えておらず、世にモメごとの種は尽きまじ。胸像を埋葬する場面は何度読んでも涙が出ちゃう。2022/12/20
S.Mori
12
ユーモアとペーソスを感じる味わい深い中編が3つ収録されています。特に表題作が好みでした。飲んだくれの宿無しがセーヌ川の橋下で、感じの良い紳士からお金をめぐまれるという意表を突いた出だしです。アンドレアスはだらしない男でそのお金をすぐに使ってしまいます。運よくまた気の良い人からもらうのですが、それも浪費して……。極楽とんぼと言う言葉がぴったりのアンドレアスを作者は愛情をこめて、描き出します。惨めな人生とも言えるのですが、胸の中には一筋の純粋な思いを持ち続けて、出会う人たちもそれを感じ取ります。→2020/04/03
ほーすけ
8
最初から最後まで、見事な酔っぱらいぶり。預かった大金を浮浪者の誇りをかけ届けようとするものの、人と会うたび二転三転の運まかせのアンドレアス。「酒に酔い、友に酔い、女に酔い、酔わずして何の人生か」そんな作者の気概が感じられる。テレーズは何の暗喩なのか?と色々想像してしまう。他2篇からも、暗い時代に心身ともに傷つきながら未来へと夢想するロートの姿が垣間見える。イタリア映画になった本作はもう廃盤で残念。アンドレアス役は「ブレード・ランナー」のレプリカント役で印象的だったルトガー・ハウアー。ちょっと見たかったな。2013/11/15
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