出版社内容情報
南部の田舎町の酒場を舞台に繰り広げられる奇妙な三角関係。他者との心のつながりを渇望する孤独な人間の姿をさびれた町の風景の中に写した「悲しき酒場の唄」は、おかしくも悲しい不思議な感動を与えて、マッカラーズ描く愛の挽歌をかなでる。他に軽い小品ながらそれぞれに面白い3短篇を収録。
内容説明
南部の田舎町〈悲しき酒場〉にくりひろげられる奇妙三角関係。他者との心のつながりを渇望する孤独な人間の姿をさびれた町の風景のなかに詩情豊かに描いた表題作。他に「木石雲」「騎手」など3短篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
78
愛したい、愛されたいのに不器用故に生き辛くなる人々への描写が本当に優しい。本当に町山智弘氏も紹介していた『心はさびしい狩人』も復刊して欲しいな…。従兄弟のライマンのボンクラぶりがどうしようもない。しかし、その気性により、畏怖と敬愛を受けていた女性が勝負に負けた事で今までの気力を失ってしまうラストが寂し過ぎます。個人的に好きなのは「家庭の事情」。生活の中で人間のどうしようもない弱さを許せない気持ち、でも掛け替えのない瞬間に出喰わした時に湧き上がる愛おしさの描写を何度も反復してぎゅっと抱きしめたくなります。2017/09/06
ちゅんさん
49
マッカラーズの作品の根底には孤独や悲しさが流れている。『心は孤独な狩人』のような一方通行の想い、奇妙な三角関係。読後なんとも言えない感情になる。ほんのりマッカラーズの筆致に温かさを感じられるのがいい。『家庭の事情』もなかなかでした。2021/01/19
ペグ
34
いびつな外見とちぐはぐな行動。情緒性を排した短い文章から内面を表現しようとした作者に潔さを感じる。どこか突き放した感のある、この小説は一読しただけでは何か見落としている思いがあり心が落ち着かない。再読予定。2016/01/22
ソングライン
21
どんな平凡な人間でも、どんな嫌な面を持つ人間でも、愛の対象となるのは、もっぱら愛する側の人間の価値観によります。愛する者は、愛される者を相手にありとあらゆる関係を持とうと熱望しますが、愛される者はその束縛を苦痛としか感じないことがあります。アメリカの田舎町で暮らす男女3人が、各々をそんな愛し方をした時に、おこる悲劇を淡々と描いていく、中編「悲しき酒場の唄」、旅先で別れた妻の新しい家庭を訪ね、その変わらぬ美しさと幸せを見た男の哀切を描く短篇「旅情」を含む小品集です。2019/02/03
meri
18
「自分にはたいした価値なんてない」この思いを払拭するための愛に、一体どれ程の価値があるのだろう。「一人ぼっちの淋しさ」を埋めるためだけの愛に、一体どれだけ相手を慈しむ心があるのだろう。この作品は私たちに問いかける。では、それらの愛が真実ではないという証拠は、どこにあるのかと。答えは否だ。しかし、愛されたいと願うものにとって、「愛すること」が一種のツールであることもまた事実である。「愛されるもの」には「覚悟」が必要である。それは、ある種の無責任さと、信頼と、誠実さを含んでいるのだ。2014/11/06
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