出版社内容情報
母の死、デモ、狂った兄、兄弟の間に蠢く得体の知れない白痴と餓鬼――「幻想」の形をかりて現実への反抗をアレゴリカルに行う「沈黙の眼」をはじめ、朝鮮独自のスタイルをもつ近・現代の小説を集めた初の選集。「禽獣会議録」「飢餓と殺戮」「つばさ」「狂った鳥」「夢路と言葉路」他10篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
88
朝鮮の幻想小説集です。しかしながらどちらかというと寓話的な話が多いように感じました。朝鮮の歴史と関係あるようで中国や日本に統治された時代などのことがかかれているように感じました。様々な動物や虫たちの姿を借りて言いたいことを言っている感じです。私はオーウェルの「動物農場」を思い出したりしました。2024/02/08
中玉ケビン砂糖
57
さきに読んだ本の続きめいてしまうが、「幻想」と銘打たれていても「泉鏡花的」「ファンタスティックな」というニュアンスからはズレがある。あえて言えば「寓話」か「寓話を介した批評」もしくは「シュルレアリスム」の語が浮かぶ。そもそも概括すると、「朝鮮文学」とは一体どこからどこまでを指すのかという労を要する問いに着陸せざるを得ない。しかしそれは「ドイツ語圏の作品」が「ドイツの文学」ではないというようなケースとはまったく話が違ってくる。2023/04/08
有沢翔治@文芸同人誌配布中
8
「ネズミものがたり」、「狂った鳥」など政治的な話が多く、文学は個人的な思想を綴るものだという僕の考えと反していました。僕には合いませんでしたがこれは好みの問題だと自覚していますので、小林多喜二などが好きな人にはオススメです。2015/04/16
竜王五代の人
4
選者の金学烈という人が「文学者」なのか、朝鮮ではファンタジーは政治表現のオブラートだったという説明が本当なのか、寓話とシュルレアリスムばっかりで「幻想小説」という題名が泣く。比較的最近の1989年に書かれた「夢路と言葉路」も、現実的にはちょっと難しい南北文学者同士の対談を、夢を道具にして表現しただけ。前近代の文学には幻想が多かったと分かってるなら、そういうのを一つでも入れろや。2024/08/02
コウみん
1
朝鮮幻想文学の短編集。最初は人間世界を批判する動物たちの話から始まり、李箱の「つばさ」など20世紀の挑戦幻想文学の有名作を紹介。2024/07/30