出版社内容情報
中国の怪異・幻想小説は、古来の夢や「怪力乱神」への関心を淵源として発展し、その長大な流れは数々の名作を生んだ。古典からは「杜子春」「牡丹灯篭」「白蛇の物語」「聊斎志異」など、近・現代からは不条理な現実から花開いた魯迅、巴金、莫言らの多彩・鮮烈なファンタジーを精選して収録した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
82
このシリーズもあと数冊を残すのみとなりました。今回はこのような物語の本場の中国の作品集で、長編では「西遊記」など最たるものでしょう。ここでは「邯鄲の夢」からはじまり、芥川龍之介が原案とした「杜子春」や私もかなり読んでいる「聊斎志異」の中からの抜粋さらには魯迅の作品まで収められています。このような作品が生まれる背景にはやはりこの国の地域性(すなわち砂漠や峻険な岩山などがあったりする)もあるのではないかと感じられました。2023/01/20
藤月はな(灯れ松明の火)
63
「終景累ヶ淵」(空木春宵)が呼び水になり、「牡丹燈籠」の原点を読む。すると日本人作家によって換骨奪胎された中国の古典の多さに気づく事が出来ました。邯鄲の夢な「枕の中の人生」でピンチになると「畑があったのに」と嘆くも辛い時を過ぎればケロリと忘れて快楽に溺れる者の滑稽さよ。宮仕えの栄誉も儘ならぬ我が身を顧みられないという事の反面なのが憎い。皆川博子さんの短編「花の眉間尺」の基になった「復讐の剣」ですが、眉間尺の中途半端な残虐性・慈悲故の煮え切らなさに苛々させられた。首争いの結果、誰しも等しく、しゃりこうべ。2024/08/25
かわうそ
30
どこかで聞いたことのあるお話の元ネタ的な古典的作品から莫言まで幅広く。怪談風の話も多いけど、怖いというよりは割と身も蓋もなくてけっこう笑えた。「聊斎志異」はもっといろいろ読んでみたい。2017/01/31
rou
10
魯迅と莫言の作品のみ。莫言『秋の水』、全て大ぶりの力強さ。人間も動物も同じ食べ物を奪い合うし、恋愛のスケールも大きくて出産に大洪水っていちいち神話的過ぎるし鮮烈。後から夫婦以外の何者かわからないけど刺客とかなんか凄そうな人達も出てきて、あの夫婦のコスモロジーにどう絡んでいきたいのかよくわかんなかったけど。2018/09/28
さとまる
9
隋唐~明末清初あたりの怪異小説と、辛亥革命以降の近代小説の2部構成。個人的には作意が見える近代小説よりも、単純に怪異を語る前半部のほうが面白かった。牡丹灯籠って中国の小説がオリジナルなんだ!というのが驚き。2024/04/30