出版社内容情報
神をおそれぬ肉欲、同性愛、近親相姦、動物偏愛……ヤーンの好んでとりあげる世界に尋常一様なものはなにひとつない。すべてが、赤裸々にあばかれた生の暗流のなかを寄辺もなくただよう。「デープリン亡きあとドイツ散文の最も重要な作家」と評された、ヤーンの戦慄的な13篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
em
14
異様。このような物語を創りだす魂に驚嘆をおぼえる。作者がオルガン制作者でもあると知って、あの独特の倍音と日常を共にすることは、この人に何をもたらしたのだろうと考えてしまう。私がたまにする想定は”無人島に持っていくなら”ではなく、”塀の中に入ることがあったら”なのですが(そういう経験も予定もないけれど)、その時にはきっと欲するであろう本。2017/05/05
misui
10
全篇に重苦しく幻想的な雰囲気がまとわりつく。土俗的であったり不条理であったりする中に様々に血なまぐさいものが見え隠れするのだが、それは常識から外れたもの、禁忌として普通は締め出されているものである。粘りつくような文体には難儀するものの、読み終えた今となっては嫌悪と愛着の両方を誘う。きっとまた吐き気をこらえながら読むのだろうと思う。2013/06/24
saeta
6
月に2〜3度伺う小川町の肉そばの店の帰りに多少時間の余裕があったので、神保町の古本屋を覗き未知の作家の本でも読んでみようかとタイトル買いした一冊。原文がそうなのか、訳のせいか、文章が整理し切れていない印象で、読みながら頭に入ってこない箇所が多々あった。ペルシアだかアラビアが舞台の話はどこかボルヘス的な趣だ。後半の「「マーマレードを食べる人たち」「家令を選ぶとき」「水中芸人」辺りは面白かったように思う。しかしこの作家、その他の著作も翻訳されていないのか、情報が余り無いようだが。2024/11/21
pyoko45
5
幻想・怪奇な話もあるが、全体としては倒錯的で不条理な色合いの話が多かった印象。作中人物たちが散々ばら歪んだ会話をやり散らかした挙げ句の「ありゃりゃ」な幕引きに腰砕け。粘着質の執拗な描写と全体を覆う陰鬱で厭世的な雰囲気から続けて読むのはちょっとつらかった。そしていくつかの短篇が長篇三部からなる超大作『岸辺なき流れ』の(ほんの?)一部をなしているというのだから恐れ入谷の鬼子母神。どんな長篇なんだろう。2013/12/21
iwtn_
3
なんで買ったかよく覚えてないが、短編集なので読みやすかった。話のバリエーションは豊か。しかし、ある程度の無気味さにはもう慣れっこというか、味付けが過剰な時代に生きているなぁという感想。宗教的な背景が無いといかん。船長の話は何となくシンパシーがあった。とはいえ人を縫いたくはないが。有名な3部作も少し読んでみたいきましたが、しかし中々高価であることが判明したので躊躇っている。今さら文庫化もしないだろうし、どうしたものか。最後に訳者の名前を見て、なんとなく得心がいった。2025/05/17