出版社内容情報
【全巻内容】1 灰色のノート/2 少年園/3 美しい季節1/4 美しい季節2/5 診察/6 ラ・ソレリーナ/7 父の死/8 一九一四年夏1/9 一九一四年夏2/10 一九一四年夏3/11 一九一四年夏4/12 エピローグ1/13 エピローグ2
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
77
ジャックのいない戦後。父親に似た考え方をするようになっていたアントワーヌは、毒ガスの後遺症に苦しみながら過去を振り返っては反省している。ジャックの遺児は、すでにすべてのことにイヤと言い始めジャックの姿を彷彿させる。権威主義者のアントワーヌには反省の機会があるが、ジャックにはない。作者は、ジャックを永遠の青年にしておきたかったのか。2020/05/13
syaori
54
前巻から4年後。まず、あれほど未来に対して不遜だったダニエルとアントワーヌが戦争により活力を失ってしまったことに胸をつかれました。また未婚の母となったジェンニーや、フォンタナン夫人の変化にも目を見張るばかり。軍の病院に姿を変えたメーゾン・ラフィットを見るに至っては、青春の日々の遠いことを思うしかありません。しかしその中で変わらぬものもあり、また戦争やジャックのことなど変わったからこその新しい見方に救われる思いもしました。かつての輝かしい日々と、不安な、しかし可能性を秘めた未来を見晴るかしながら最終巻へ。2021/02/24
榊原 香織
53
前巻で終わり、と思ったのは発表当時の人々もそうだったらしく、作者、慌てて、まだ続きがあると発表したそうなw ホントの主人公は兄アントワーヌだったなんて 一番気に入ってたから良いんだけど 2020/11/11
藤月はな(灯れ松明の火)
25
第一次大戦から4年後。語りは最後のチボー家、アントワーヌに。彼は毒ガスの影響で命が削られ、ダニエルは片足を失ったショックか、廃人状態に。大戦で己の中にあった虚無を剥き出しにされた男性陣に対し、女性陣は日々の生活のために自分で立つしかなかった。偽善過ぎて好きじゃなかったフォンタナン婦人が一番、逞しく、そして女性特有の嫌な怒りっぽさを醸し出しているのにちょっとホッとします。そして己の虚無を見出したことでジャックを初めて理解できたことに対し、それが遅すぎたことを後悔するアントワーヌの心情が痛々しすぎる・・・。2015/09/30
ぞしま
16
エピローグ、これがあってほんとうによかった。大袈裟かもしれないが、ジャックの死を受け入れることが出来た。遺児、ジャン•ポールは新たな生でありながら、追憶の象徴。亡骸の不在と残像を醸す。実はジャックの小さな頃を知らないけど、彼を見て、きっとああだったんだろうと思う。少し既視感に満ちてはいるが、ここにあるのは無論、新たな別の物語。しかしそれは地続きである。喪失、再生を繰り返し人は生を営んで来た、当たり前だがそんなことに気付くようだ。メロドラマの否定に思えるほど作者の眼差しは一貫して厳しく公正だ。2015/01/16