出版社内容情報
【全巻内容】1 灰色のノート/2 少年園/3 美しい季節1/4 美しい季節2/5 診察/6 ラ・ソレリーナ/7 父の死/8 一九一四年夏1/9 一九一四年夏2/10 一九一四年夏3/11 一九一四年夏4/12 エピローグ1/13 エピローグ2
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
70
第一次世界大戦前夜のパリ。社会主義者たちの足並みは乱れ始めている。軍医として徴兵されるアントワーヌは一般人の代表。理想主義者ジャックは、戦争忌避者となり戦争反対を唱え続けることを決意。2020/05/11
syaori
55
本巻では、祖国の危機を前に「国際的同胞愛」が「国民としての同胞愛」、愛国主義へ変化すること、消極的ながら戦争を「受諾」してゆく人々の姿が印象的でした。アントワーヌはそれが「社会契約」だと言う。国家が社会に与える秩序、その反対給付として戦争へ行くのだと。その他の人々も様々に戦争に行く理由を見つけてゆくなか、平和をあきらめないジャック。しかしその「素朴な信念」は、開戦不可避という状況下では全くおとぎ話じみて見えることも確か。そうは思いながら、絶望しない彼の純粋さに何かを期待する自分がいることも認めつつ次巻へ。2021/02/18
榊原 香織
50
10巻目、1914年7月28~8月1日の出来事がこの巻。 第1次大戦勃発がいよいよ避けがたく。 戦争前の感覚、ざわざわとした不安感が空気伝染するような。2020/11/10
藤月はな(灯れ松明の火)
31
「戦争は一番、儲かる稼業」という言葉は誰の言葉だっただろうか。そして「戦争は権力者や経済、国を潤すが、戦争に巻き込まれる庶民には悲劇と怨念しか与えない」という言葉も。大逆事件で処刑されてしまった幸徳秋水氏も危惧した「愛国主義」という名の全体主義や軍国主義への危機感は大きな流れによって流されてしまう。最もリベラルな反戦争主義者だった「おやじ」がジャック達の目の前で暗殺されるという場面では絶望しかない・・・。2015/09/29
しんすけ
19
1914年7月28日、オーストリアがセルビアに宣戦布告した。 6月28日のサラエボ事件の報復との形を呈しているが、戦争のきっかけを求めていたオーストリアにとってはサラエボ事件が呼び水だったのだ。 こうした状況下でジャックとジェンニーの運命は縛られ逢瀬の時間も限られることを、どちらも自覚せざる得なかった。 社会主義者の集会にはジャックは今まで一人で行っていたが、ジェンニーも一緒に行きたいと言い出す。 社会の変化が自分たちの運命を変えてしまうかのような恐怖感から、ジャックの傍から離れたくなくなったのだろう。2020/09/04